【渋谷区】玉川上水の開渠部分を渋谷区内で見る 「ザブザブ」と甲州街道に響く水の流れ
玉川上水と言えば、全てが暗渠化され、木々に囲まれた緑道のイメージが頭に浮かぶ人も多いです。しかし、その原型を知ることができる場所が渋谷区内に存在します。
人工の水路である玉川上水のあらまし
江戸時代の急速な人口増加が進む中で、飲み水不足の解消を目指し、江戸幕府が多摩川の水を江戸まで引き入れた用水路です。取水場は東京都羽村市に設けられ、新宿区の四谷大木戸まで全長43kmの水路が開削され、1654年に完成しました。しかし、1965年頃には利根川の水が東京に導水され始めると、玉川上水は用途を失くして暗渠化されました。その後は緑道や公園などに姿を変えていきました。
緑道から大三号橋を挟んで水路が流れ出す
緑道の途中途中に、昔の上水路を渡る橋の欄干だけが残されています。しかし、大三号橋の片側からは玉川上水の水の流れが視界に現れます。水が流れているのが分かる程度の水量ですが、玉川上水が利用されていた江戸時代には人が流されるほどの水量でした。
人の手によって開削された水路
開渠の玉川上水が見られるのは、渋谷区の北にある京王線笹塚駅の近辺です。数百メートルほどですが、緑道からの続きで姿を現します。水は少量ですが今も流れています。
この水が新宿区まで自然の傾斜を利用して流れていくように開削されました。緑道が不規則に曲がりくねっているのは、そのためです。
開渠(かいきょ)部分は、都の歴史環境保全地域に指定されています。
かつて人々の生活を支えていた玉川上水には、太宰治の入水自殺という暗い歴史も存在します。この事実から、人々の生活と深く結びついていた水路であることが示されています。また、多くの歴史を持つ玉川上水の開渠部分が現在も残されているのは意義深いです。
甲州街道の歩道に響く「ザブザブ」という水音
玉川上水は、ゆずり橋の下から再び開渠の姿を現します。
手前で京王線の下をくぐり、甲州街道の下で暗渠である地下に戻ります。
以前、甲州街道の歩道で地下から「ザブザブ、ザブザブ」という水の流れる音が聞こえたことがあります。しかし、最近の観察では、その水の音は消え、水位も低くなっています。
この事象は、羽村取水堰での増水による放水が原因であった可能性があります。放水により開渠部分で水音が鳴り響き、地下から水が溢れ出るほどの勢いで流れていたのかもしれません。
玉川緑道を辿る旅を楽しむ人々が増えています。今回、紹介した開渠部分が見られるこのコースは、緑道に点在するベンチで休憩しながら水面を眺め、散策を楽しむことができます。途中、人気の洋食店や近くには手頃な和菓子屋も見つけることができます。これらの要素が組み合わさって、より楽しい散策体験ができるはずです。
玉川上水
場所 スタート地点は「第二号橋」です。東京都渋谷区笹塚1丁目33−12