ロボットやコンピューターが人の仕事を奪う未来に誰が責任を持つべきか、世界の人々の考えをさぐる
新技術の代表格であるロボットやコンピューターは労働市場の構造を変え、多くの人の職を奪うとの懸念もある。政府や学校、そして自分自身は対応の責任を負うべきなのだろうか。アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年9月に発表した調査「In Advanced and Emerging Economies Alike, Worries About Job Automation」(※)の報告書を基に、諸国の人々の考え方を確認する。
調査対象国の人達の多くは、ロボットやコンピューターが多くの仕事で人にとって代わるようになったら、人の職探しは大変になる、つまり失業する人が増えると考えている。
これは新技術で人ができなかったことだけでなく、人がしていることをもっと効率的に、低コストで行えるようになるからに他ならない。
それではそのような人達のために、技術革新が進む世の中でも十分に働ける、働き口が得られるような、相応の技術と教育を確保するため、政府や自分自身はどれほど責任を負って対応しなければならないと、人々は考えているのだろうか。「大いに負うべき」「いくぶん負うべき」「ほんの少しだけ負うべき」「負う必要は無い」の選択肢を提示し、そのうち「大いに負うべき」、つまり大きな責任があると回答した人の割合を示したのが次以降のグラフ。
まずは公的機関への責任について。
対政府も対学校もおおよそ過半数の人が責任重大であると認識している。特にアルゼンチン、南アフリカ、ブラジルでは対政府と対学校双方とも7割を超えている。これらの国々では見方を変えると、それだけ多くの人がロボットやコンピューターのような新技術で自分の職が奪われかねないとの懸念を強く抱いているのかもしれない(上記グラフにある通り、まさにその通りなのだが)。
特徴的な動きを示しているのは日本とアメリカ合衆国。日本では対学校、アメリカ合衆国では対政府への値が極めて低い。これに関して報告書には特に何の説明もないが、それぞれにおける貢献が元々期待できない状況なのか、あるいはそういう役割を担っているという認識自身が薄いのかもしれない。とはいえ、日本における学校への値が37%というのは、低すぎるような気がするのだが。それほどまでに期待されていないのだろうか。
次いで自分自身や雇用主への責任について。
アルゼンチン、南アフリカ、ブラジルでは対政府や対学校同様、自分自身や雇用主に対する責任も大きなものであるとの認識が強い。また、カナダやポーランド、アメリカ合衆国でも自分自身への責任は重大であるとの声が強いものとなっている。ただし雇用主に対する責任はさほど強いものでは無いとの認識のようだ。
特徴的なのは日本。自分自身、雇用主双方に対して半数を割っており、両方とも諸国内ではもっとも低い値を示している。学校に対する責任の度合いも低いことを併せ考えると、日本は新技術における就業問題に対し、ひとえに政府が責任を負うべきであるとの認識のようだ。何となく理解できる結果ではある。
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※In Advanced and Emerging Economies Alike, Worries About Job Automation
対象国において2018年春に行われたもので、調査対象母集団は各国18歳以上で約1000人ずつ。調査方法は電話による対話形式や対面形式など。一部の国では都市部のみでの調査実施。それぞれの国の国勢調査などの結果に基づいたウェイトバックが実施されている。ただし一部設問におけるアメリカ合衆国の調査結果は、2015年6~7月に行われた同様の調査結果を適用させている。
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(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
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