2014年ツール・ド・フランス第3ステージ たまには観光地巡りなど
私にとっては10回目のツール・ド・フランス旅である。
都会からど田舎まで、フランスの隅々を走り回ってきた。海辺から山奥まで、フランスのあらゆる風景を目にしてきた。その辺のフランス人なんかよりも、おそらく、フランスの地方には詳しいと思う。ただし、各地を堪能してきているかというと、残念ながらそれは違う。アヴィニヨンにはこれまで何度も行きながら、教皇宮殿は前を通過したことがあるだけ。今年のツールではランスに行くけれど、おそらく、フランスの歴代王の戴冠式が行われてきた大聖堂は、TV中継の空撮映像で見ることになるのだろう。
実はツールの間はあまりにストレスが多いため、観光に行きたい!なんて考える余裕はない。なぜだろう、朝も昼も夜も、1秒たりとも無駄に出来ない、そんな奇妙なプレッシャーに3週間苛まれ続けるのだ。大会規模があまりにも大きすぎるため、選手だけでなく、メディアも常に緊張にさらされている。
ところが、たとえばブエルタ・ア・エスパーニャだったりすると、レース自体がやけにリラックスしているせいか、観光できないことを歯がゆく思う余裕が生まれてくる。取材でグラナダにはもう4度も寝泊りしているのに、アルハンブラ宮殿の入り口さえ見に行ったことがない。最終日のプレスルームは、例年、プラド美術館の目の前だ。ああ、ゴヤの絵が見に行きたい、と思いつつ、いまだ夢は叶えられていない。
だから、この第3ステージのように、観光地のど真ん中でゴールしてくれると、ちょっと嬉しい気分になる。だって仕事のついでに、タワーブリッジやウエストミンスター寺院、ビッグベンをじっくり眺めることが出来たのだから。マルセル・キッテルが2勝目を上げたフィニッシュラインの向こう側には、バッキンガム宮殿もうっすらと見えた。
しかも、プレスルームはセントラルホール・ウエストミンスター内に設置されていた。荘厳な内装には感動させらた。ただメソジスト教会の大ドームの中で、巨大なパイプオルガンの目の前で、レースを見ながらキーボードをひたすら打っただけなんだけれど。
そういう訳で、取材中の楽しみは、沿道ののどかな風景と地元の名物料理。幸いなことに、英国にはパブがあった!