あらためて日銀のマイナス金利解除時期を占う
12月調査のQUICK月次調査<債券>によると、日銀がマイナス金利を解除する時期の質問に対し、111名中68人が2024年4月と回答していた。次に多かったのは2024年1月の21人、3月の9人と続いていた。
今年1月1日の能登半島地震によって、債券市場でも早期のマイナス金利解除観測はいったん後退している。それでも、今回の地震による経済への直接的な影響は、金融政策の修正予測を大きく後退させるほど大きいものとは考えづらい。
1月5日の日経新聞は「地震の被害状況をみながら(2024年度予算案の予備費の)上積み幅を見極め、新規国債の発行額を予定より増やして賄う」と報じられた。ただし、これによるカレンダーベースの国債発行計画が修正される可能性は薄いとみられる。
これまでもかなり慎重な日銀であったこともあり、もともと1月解除予測は少数派であったこともあり、1月の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する可能性は低いと見ざるを得ない。やはり本命は4月であり、それまでには地震による影響も後退していよう。
問題は市場が予想しているように金融政策の方向を変える選択を今度こそ日銀はしようとするかどうかである。
日銀のスタンスに変化が出ていることは、昨年12月の「債券市場サーベイ・特別調査」の結果の公表、6日の氷見野日銀副総裁の講演、7日の植田総裁によるチャレンジング発言などから明らかとなっている。
しかし、12月19日の金融政策決定会合では、全員一致での金融政策の現状維持を決定した。マイナス金利解除を匂わすこともなかった。
これはあくまで表面上はそのようにみえる、いやみせているだけで、現実には状況が変わりつつあるように思える。
少なくとも植田総裁と氷見野副総裁は、マイナス金利解除に前向きであることは想像できる。ここに田村審議委員も加わる。
しかし、これに対し内田副総裁は、引き続き金融政策の方向を変えることにかなり慎重となっている。その背景には過去のトラウマとともに政治もあろう。
官邸や安倍派などが、アベノミクスの修正と捉えられることに拒否感を抱いているように見受けられる。
ただし、安倍派が現状、それどころではなくなっていることもたしかであり、また岸田政権とすれば、デフレ脱却宣言を行うことで起死回生の動きに出るといったことも予想される。
日銀がマイナス金利解除に動き、その理由にデフレ脱去がみえてきたためとすれば、政権としてもそれを利用することもできよう。
いずれにしても日銀にとって今回が最大のチャンスとなることが予想される。欧米が利下げに転じる前に日銀は少なくとも金融政策の正常化を行っておく必要があろう。