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世界的な物価の上昇要因とは何か、日本の物価も上がりやすい状況となり、生活にも影響も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:cap10hk/イメージマート)

 物価上昇にはいくつかの種類がある。現在、世界的に物価が上昇している。物価上昇の種類として、コストプッシュ型とディマンドプル型という代表的な種類がある。

 コストプッシュインフレとは、原材料や資源価格の上昇による資源インフレや賃金の高騰による賃金インフレなどがあり。いわゆる供給サイドの要因によるインフレである。

 これに対してディマンドプルインフレとは、景気回復に伴い、経済の総需要の伸びが総供給に追いつかなくなるために生じる物価の上昇現象であり、こちらは発生原因が需要サイドにある。

 現在の世界的な物価上昇はコストプッシュかディマンドプルのどちらなのかと問われても明確に区別はできない。むしろそれぞれの物価上昇要因が組み合わさっている。

 コロナ禍による経済の大きな落ち込みの反動もあって、米中などの景気回復も手伝い、世界経済は回復基調に向かっている。そのための需要の回復があり、コロナ禍にも影響されてサプライチェーンの問題も絡んで供給側からも影響が出ている。

 コロナ禍からの回復によるディマンドプルに加え、エネルギー需要そのものの拡大ととも、石炭や天然ガス、さらには原油価格も上昇してきたことでコストプッシュが重なり、物価上昇を長引かせる要因となりつつある。

 日本では日銀が発表している国内企業物価指数で、9月は前年比プラス6.3%と2008年9月以来13年ぶりの高い伸びとなった。消費者物価指数は前年比ゼロ%近辺ながら、今後は上昇圧力が加わる可能性が高い。

 物価上昇要因としては別の要因もある。通貨安による輸入物価の上昇である。欧米の長期金利に対して日本の長期金利は日銀の政策で押さえ付けられており、身動きが取りない。

 世界的な物価上昇は長期金利に働きかけることで欧米の長期金利はここにきて再び上昇基調となっているが、日本の長期金利の動きには限界があると見通され、仕掛け的な円売りも入って円安基調となっている。

 この円安も物価上昇に働きかける。つまりは現在の日本の物価を取り巻く状況としては物価が上がりやすい状況となっているのである。

 結果として日銀の異次元緩和が物価に効くといったかたちとなっているが、これが本来求められていた物価上昇ではないはずである。賃金上昇が伴わない限り、国民生活にとってデフレからの脱却は生活を苦しくさせることにもなりかねない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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