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次の英国王はチャールズ皇太子、王妃はカミラ夫人と公式に表明したエリザベス女王の狙い

木村正人在英国際ジャーナリスト
エリザベス女王から次の国王と王妃に公式指名されたチャールズ皇太子とかミラ夫人(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

[ロンドン発]2月6日、在位70年(プラチナ・ジュビリー)を迎えるエリザベス英女王(95)が5日、その時が来ればチャールズ皇太子が国王になり、カミラ夫人は王妃(クイーン・コンソート)としてサポートすると異例の声明を発表した。女王が高齢になり、王位継承の日が近づくにつれ、カミラ夫人が王妃になるかどうかは国民の大きな関心事の一つになっていた。

エリザベス女王は1952年2月6日、父の国王ジョージ6世の崩御に伴い、25歳という若さで即位。2015年にはビクトリア女王(在位1837~1901年)を抜き、英史上最長在位の君主となった。21年4月には、73年半、連れ添ったフィリップ殿下を亡くし、衰えが目立つようになったものの、この日は元気な姿をプラチナ・ジュビリーのレセプションに見せた。

チャールズ皇太子はカミラ夫人との不倫、それが原因となったダイアナ元皇太子妃との離婚、元妃の交通事故死で人気が低迷、女王が崩御したあと英連邦の衰退を危ぶむ声すらある。カミラ夫人も元妃と世間に配慮して皇太子妃を名乗らなかった経緯があるため、女王がプラチナ・ジュビリーに合わせて公式に後継指名したとみられる。

王室の伝統に馴染めないメーガン夫人がヘンリー公爵を引き連れて20年3月に王室を離脱。アンドルー王子の未成年者性交疑惑が紛糾する中、エリザベス女王にも、チャールズ皇太子にも王位継承の道筋を明確にしておきたいという狙いがあった。

この日の声明で、女王は即位前の21歳の誕生日にラジオ演説で「私の生涯は長くても短くても、皆さんと偉大な王室への奉仕に捧げる」と宣言したことを振り返り、「社会、技術、文化の発展はこれまでと同じように若い世代に機会を与えてくれるだろう」「全身全霊で国家に奉仕することに喜びを感じている。あなたに仕えるエリザベス」と誓いを新たにした。

チャールズ皇太子には、王位を承継した暁にカミラ夫人には誰にも気兼ねせずに「王妃」を名乗ってほしいという思いがあった。カミラ夫人も12年、エリザベス女王からロイヤル・ヴィクトリア勲章を与えられ、16年6月には枢密院に引き立てられた。昨年の大晦日には英最高勲章、ガーター勲章が与えられるなど「王妃」への階段を着実に歩んできた。

チャールズ皇太子とカミラ夫人が結婚した05年の世論調査では、チャールズ皇太子は王位承継をあきらめるべきだという意見が43%にのぼった。結婚10年目の15年に行われた世論調査ではカミラ夫人は「王妃」を名乗るべきではないという意見が55%にのぼったのに対し、容認する声は32%。ダイアナ元妃の方が相応しいという回答は55%にものぼった。

世論調査会社YouGovによると、チャールズ皇太子が良い国王になるという人は34%。ならないは33%。カミラ夫人について、チャールズ皇太子が国王になった時、王妃を名乗るべきだという人はわずか14%、プリンセス・コンソートが相応しいと考える人は42%、タイトルは必要ないという人は26%にものぼっている(昨年11月)。

17年に出版されたカミラ夫人の非公式伝記本『公爵夫人の語られなかった物語』にはダイアナ元妃とチャールズ皇太子の間には大きな知的ギャップがあり、ダイアナ元妃は皇太子より皇太子妃という地位に恋していたという関係者の懸念が綴られている。結婚が近づくにつれ、ダイアナ元妃はわけもなく怒ったり、ヒステリックに泣き出したりしたという。

著者の女性作家ペニー・ジュナー氏は当時、英メディアに対し、カミラ夫人とチャールズ皇太子の関係について「カミラ夫人は英王室を破壊した愛人ではなく、実際には王室を救ったのよ」と、元妃との結婚生活に苦悩するチャールズ皇太子を崩壊の淵から救ったのはカミラ夫人だと公然と擁護した。

エリザベス女王の祖父ジョージ5世(在位1910~36年)の伝記を著した英バッキンガム大学のジェーン・リドリー教授はチャールズ皇太子について「即位する準備は十分できている。彼は優れた国王になるだろう。しかしそうなるまで誰にも分からない。現時点で彼の評価はかなり高い。カミラ夫人も信じられないほど頑張っている」と評価しているのだが…。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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