米メディアの見出しに登場。「おとぎ話」「冒険」、粋な表現と笑顔で欧米人を魅了する渋野日向子への期待
渋野日向子が米ゴルフ雑誌のウエブサイト上でヘッドラインになっていた。それは「Smile! Hinako Shibuno(スマイル!ひなこ・しぶの)」がスコットランドのリンクスに初挑戦することを報じている記事の見出しだった。
コロナ禍で休止している米女子ツアーは7月末からようやく再開され、米国内で2試合を開催後、戦いの場を英国へ移し、スコットランド2連戦となる。
8月13日~16日はアバディーン・スタンダード・インベストメンツ・レディース・スコティッシュ・オープン。その翌週、8月20日~23日はロイヤル・トゥルーンでAIG全英女子オープンが開催される。
昨年、全英女子オープンを制した渋野は、言うまでもなく、ディフェンディング・チャンピオンとして同大会出場資格を有しているが、前週のスコティッシュ・オープン出場資格は持っていなかった。
だが、同大会から推薦出場がオファーされ、渋野はそれを受けて出場する意志を表明。そのことを、米ゴルフ雑誌「ゴルフウィーク」が嬉しいニュースとして記事化し、「スマイル!ひなこ・しぶのがスコットランド・リンクス・デビューを決めた」という見出しを付けて大々的に報じていた。
日本人選手が欧米の試合に出場する意志を表明したことが、欧米ゴルフ界でニュースになることは、そうそう多くはない。最も最近で思い当たるのは、石川遼が初めてマスターズの特別招待を受けた2009年のときぐらいだろうか。ちなみに松山英樹は欧米のビッグ大会には、ほぼすべて自力出場してきたため、推薦や招待を「受けた」「出る」という形でニュースになったことは、ほとんどなかった。
いずれにしても、渋野への欧米ゴルフ界の注目度は、きわめて高い。注目度というより、コロナ禍で気分もムードも暗くなっている今、渋野のスマイルで「癒されたい」という期待が寄せられているのではないだろうか。
ゴルフウィーク誌の記事には、こんな下りがある。
「“スマイリング・シンデレラ”渋野は昨夏、全英女子オープンでロープ際のギャラリーにハイファイブをしながらプレーして勝利。屈託のない笑顔と人柄、スピーディーなプレーで人々を魅了した。今年は無観客でも、カメラに向かってスマイルを見せ続けてくれることを期待している」
「優勝」とか、「トップ10」とか、「世界ランキング」とか、「五輪」とか、そういうことより、「笑顔で人々を楽しませてほしい」という願いが記されている記事。エンタテインメント性がこれだけ期待された日本人選手は、渋野が「初」だと言っていい。
渋野が出したコメントも、粋な英語で綴られていて、「これなら欧米ウケはめちゃくちゃいいな」と思えた。渋野が発した日本語のコメントを誰かが英訳したのか、それとも渋野サイドの誰かが彼女の意向を聞いて欧米向けに英語の声明を記したあと、それが日本語に訳されたものが日本メディアに配信されたのか。そのあたりの詳細な前後関係はさておき、とにかく渋野のコメントということで米メディアが記事中で使っている英文がとても素晴らしい。
「英国リンクスでプレーする機会をいただけたことに感謝します、、、、昨年の全英女子オープンでの体験は、フェアリーテールの一部になったような感じでした。スコットランドでの次なるアドベンチャーをとても楽しみにしています」
「フェアリーテール」は「おとぎ話」。「アドベンチャー」は「冒険」。どちらも、欧米人に好まれている代表的な言葉だ。スマイリング・シンデレラと呼ばれてきたからこそ、シンデレラに引っ掛けて、おとぎ話を地で行くような体験だったと表現しているこのコメント、この英文は、欧米人の心に訴えかけること間違いない。ネクスト・アドベンチャーが楽しみだという表現も、若さや勢い、意気込みが感じられ、これも欧米のファンの心を鷲掴みにするはずである。
書き手として考えれば、この英文コメントがあるか無いかで、欧米メディアが記事化するかどうかが変わってくるはずであり、今回の英訳に見られるような、こういう気遣いを含めたトータルなサポートこそが、これからのスターを育てていく上でのグローバル化の戦略、戦術となっていくのだと確信できた。