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渋野日向子はアマチュアのプレーに影響された?全米女子オープン最終日のカギは?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

全米女子オープンは渋野日向子が3日目を終えた今もなんとか単独首位を維持している。日本人選手のメジャー2勝達成を是非とも見たいと願いつつ、それにしても今年の大会には普段はなかなか見ることのない特異性が見て取れる。

3日目の渋野が18ホールをともに回った選手は、2人ともアマチュアだった。アマチュアがプロの大会に出場することはもちろんあるから、プロがアマと試合で同組になること自体は、さほど珍しくはない。

だが、2日目に単独トップに立った選手とともにムービングデーの3日目を最終組で回った選手が、2人ともアマチュアというのは、きわめて珍しいことだった。いやいや、もっと言えば、初日から周囲にはトップアマがたくさんいたわけで、その現象、その雰囲気には、少なからず特異な空気が感じられたはずである。

そもそも全米女子オープンは、その名の通り、オープン競技ゆえ、プロアマ問わず、広く門戸が開かれている大会だ。

しかし今年はコロナ禍の影響で誰にもオープンな地区予選を行なうことができなかった。その代わり、USGAは出場資格を最大限拡大し、多くの選手に出場の機会を与えた。日本人選手が史上最多の19人も出場できたことは、まさにその恩恵だった。

さらにUSGAは世界のトップアマチュアにも門戸を大きく広げ、今大会には合計24名のアマチュアが出場。そのうちの18名が世界アマチュアランキングのトップ20に数えられており、この24名は、いずれもアマチュアとしては百戦錬磨の将来有望なトップアマばかりだ。

アマチュアは、「アマチュア」という看板を掲げて歩いているわけではないから、一見しただけではプロかアマかは、わからないと言えば、わからない。しかし、ちょっとした所作や雰囲気でプロかアマかは、見る人が見れば実はわかる。日ごろ、トッププロの中でプレーしているトッププロであれば、一目見ただけで、プロとアマの違いには、ほぼ間違いなく気付く。

一言で言えば、多くの場合、アマチュアはやっぱりいろんなことがフレッシュだ。多くの場合は若者だから、まずは見た目が若々しくてフレッシュ。そして、ゴルフもフレッシュ、つまり、いい意味でも悪い意味でも「若いゴルフ」をしがちである。例外はもちろんあるが、攻め方やスコアメイク、あるいはメンタル面の保ち方、切り替え方、いろんなことにおいて「若さ」が目立つし、際立つのだ。

3日目の渋野が同組で回ったアマチュアは、スウェーデン出身のリン・グラントと米国テキサス州の大学生、ケイトリン・パップだった。この組み合わせ、メジャー大会の決勝ラウンドの最終組としては、きわめて珍しい顔合わせだった。

それが渋野にとって、どう影響したかは本人の胸の中にしまわれている。アマチュアに負けてはならぬという意識があったとしたら、それは少々のやりにくさになっていたはずだ。

逆に、アマチュアが頑張っているのだから自分も頑張らなくてはと感じたとすれば、それは渋野にとっては少々の激励になり、パワーになっていたはず。

彼女の場合は、後者に近いものだったのではないかと私は思っているが、「今日は自信をなくすゴルフだった」というコメントの陰に、同組のアマチュアを間近に見ていたことが影響していたようにも感じられる。

いやいや、あっけらかんとしている渋野ゆえ、もしかしたら「全然、何も考えていなかった」と思っているのかもしれない。だが、同組選手の自分との異質性を感じ取らない選手はまずいない。本人がそれを「意識していた」と認識していたかどうかはさておき、同組選手を完全無視してプレーすることは、まずできないわけで、必ず何かしらを、どこかで感じていたと思う。

渋野は今大会で、「初心に戻ったつもりでやっている」ことが、いいゴルフにつながっていると言っている。彼女自身のそんなフレッシュな気持ちと、フレッシュなアマチュアが多いフィールドと、3日目はアマチュア2人と最終組という特異な状況、それらがすべてがうまくマッチアップしたことは、彼女が持つ運によるものだったのではないだろうか。

最終日、渋野はベテランの米国人選手エイミー・オルソン、そしてタイのゴルフ親善大使でもある姉妹の姉モリヤ・ジュタヌガーンと同組。3日目のフレッシュ感とはまったく異なる雰囲気になるはずだ。

そして最終日は悪天候の予報。すべては、渋野の感覚にかかっている。彼女の技術より、彼女の心の持ちようが、最終日のカギになりそうだ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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