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戦後の交通事故による負傷者、死亡者動向を探る

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 後を絶たない交通事故。その件数や、事故による死亡者数の動きを探る

警視庁が4日付で発表した統計結果「交通事故死者数について」によると、交通事故による死亡者数は4117人で前年比プラス4人、15年ぶりの前年比増加となった。これまではどのような変化を見せていたのか、戦後からの長期的動向を探る。

次に示すのは「交通事故死者数について」を元に再構築した、戦後の交通事故発生件数、その事故による負傷者数、そして死者数の動向。死者数は桁違いで少ないため、右軸でカウントしている。

↑ 1946年~2015年の交通事故発生件数・負傷者数・死者数(人)
↑ 1946年~2015年の交通事故発生件数・負傷者数・死者数(人)

このグラフは絶対値によるもの。各値そのものの現状を推し量ることはできるが、これだけでは精査が難しい点もある。そこで数字的なピークとなった「第一次交通戦争」と呼ばれる1970年の値をそれぞれ基準値の100として基準設定し、交通事故発生件数・負傷者数・死者数の推移(指標推移)をグラフ化したのが次の図。最大値を示した時からどれだけ増加・減少しているかなどの状況把握は、この方がしやすい。

↑ 1946年~2015年の交通事故発生件数・負傷者数・死者数(ピーク時の1970年の値を100とした場合、指数)
↑ 1946年~2015年の交通事故発生件数・負傷者数・死者数(ピーク時の1970年の値を100とした場合、指数)

2つのグラフからは、いくつかの特徴が確認できる。

・「第一次交通戦争」まで交通事故の発生件数・負傷者数・死者数はほぼ比例する形で上昇。

・1970年代に起きた「石油危機」で自動車の運行頻度・台数は大幅に減少し(&省エネ化の促進)、それに伴い事故発生件数・負傷者数・死者数も減少。

(注:車両台数は減少・横ばいの傾向には無い)

・その後再び各値は上昇。いわゆる「第二次交通戦争」と呼ばれる1988年には、再度事故死者数が1万人を突破。

・その後、これまでの「発生件数・負傷者数・死者数間の正比例」の関係が崩れる(指数グラフ、緑の矢印で示した部分)。

・2004年以降は事故発生件数、負傷者数そのものも減少傾向を見せている(車両台数も漸増からやや横ばいに落ち着いている)。

・この数年は死者数はゆるやかな減少、発生件数と負傷者数は急降下で減少中

特に注目すべきなのは、1990年後半以降、「第二次交通戦争」以降に起きた、「事故発生件数・負傷者数」と「死亡者数」のかい離(かけ離れること)。これまで3項目の動きがほぼ正比例の関係にあったのに対し、1990年後半を境に「事故発生件数や負傷者数が増えても、死者数は減少する」傾向を見せたこと。もちろん死者数のカウント方法を変更したり小細工をした(事故発生から24時間で統計上の事故死からは外れる)わけではない。

警察庁発表の「交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取り締まり状況について」(千葉県警のデータ不具合により各統計データは再構築中、現在取得は不可能。ただし修正該当部分は2004年から2013年に限定され、グラフの形を変形させるほどのものではないため(修正済みの公開値で確認済み)、今回は過去に取得した図版を流用する)などを確認しても、30日以内、1年以内の死亡者数も同様に減少している。「事故における死亡者数そのものが減っている」ことに間違いは無い。

↑ 交通事故発生件数・死者数・負傷者数の推移
↑ 交通事故発生件数・死者数・負傷者数の推移

交通事故による死亡者が有意な形で減っているのは、「医学の進歩」「自動車車両の(安全性向上面における)技術進歩」「交通ルールの規制強化」によるところが大きい。例えばシートベルトなら「1993年以降シートベルト着用者率は年々向上している」「車外放出によるシートベルト非着用者の致死率は着用者の約14倍」「シートベルト非着用死者の車外放出の割合は着用者の約22倍」(警察庁広報ページから)などが裏づけとなる。

統計データを見る限り、自動車事故に対して行政・自動車メーカーが行っている努力は実を結びつつある。最終的には「年間交通事故死亡者ゼロ」が目標だが、これは果たせぬ・永遠の夢。それでも関係者たちはその値を目指し、ダメージの軽減や交通ルール遵守対策、さらには事故そのものを回避するような仕組みを追い求めて続ける。一層の成果の発揮と事故関連の数字の減少に期待したいところだ。

一方、2015年は前年比で交通事故死亡者が増加したが、これは事故リスク及び事故体現化の際の死亡リスクが高い高齢者の増加によるところが大きい。

↑ 交通事故死亡者とそのうち高齢者(65歳以上)の推移(人)
↑ 交通事故死亡者とそのうち高齢者(65歳以上)の推移(人)

この影響はここ数年における死亡者減少度合いの緩慢化の原因でもあり、今後さらに状況が悪化することは容易に想像ができる。立法・行政面における施策も合わせ、早急な対応が求められよう。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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