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【橋本市(高野山エリア)】一般流通していない「鯨油」を味わう、感じる、学ぶ

田中寛人地域のあしもとマイスター(橋本市・高野町)
特別ないも天

橋本市でマニアックなイベントやりました。

和歌山県は太地町に捕鯨文化がまだ残っていますが、そこで揚がったクジラの皮や骨から油が採れます。

かつては灯火用・食用に活用されていましたが、現在ではほとんど使われておらず、当然一般流通もしておらず、もったいないので知ってもらえたらと思いイベント化しました。

本物の食用の鯨油。左はオリーブ油、右は鯨油。寒いとオリーブ油は固化するが、鯨油はしない。
本物の食用の鯨油。左はオリーブ油、右は鯨油。寒いとオリーブ油は固化するが、鯨油はしない。

今回のイベントでは、「灯り」「食」の2つの切り口で和歌山産鯨油を体験していただきました。

▼灯火として

平安時代には明かり(灯り)の燃料として使われていた記録があり、江戸時代には庶民に広がり、一般的に使われていました。

今回のイベントでは、実際に当時使われていた灯火器も使って鯨油を燃焼させ、明るさや臭いを、和ろうそく&西洋ロウソクとも比較して、感じて頂きました。

鯨油の灯火は少し独特な臭いがします。

油を使った灯りの体験があれば、災害時に身近な食用油でランプが作れます。
油を使った灯りの体験があれば、災害時に身近な食用油でランプが作れます。

江戸時代に使われていた灯火器。鯨油又は菜種油、そしてイグサからできた灯芯が使われていた
江戸時代に使われていた灯火器。鯨油又は菜種油、そしてイグサからできた灯芯が使われていた

▼食用油として

関西ではおなじみのおでん種「コロ」を作る際にできる鯨油。

日本人は捕獲したクジラの99%を活用して食用/燃料/工芸品/医薬品/化粧品などに幅広く利用して供養までしてきました。

ちなみに、ペリーが江戸幕府に開国を迫った理由は、この油を採るための捕鯨(肉は食べない)の中継基地としてのためです。

今回のイベントでは、実際に鯨油を使って、記録にも残っていた料理「鯨油でイモ天」を作りました。

鯨油で調理中
鯨油で調理中

調理中はかなり独特の臭い(干物屋さんの干し場の臭い)がして、「美味しいんだろうか?」と参加者全員思っていましたが、出来上がりはあら不思議!

『超』オイシイいも天になっていました!

明かりの時に感じた香りも、味のクセも臭みもありません。いくらでも食べられるし、冷めても美味しかった!。

次回は更にブラッシュアップして、イベント内で時間の都合上できなかった、

 ・鰯油との明かりや臭いの比較、

 ・行灯(あんどん。昔の現物持ってます)との比較、

 ・鯨油でもっと揚げ物調理、

なども好奇心旺盛な皆様と楽しめたらと考えています。

鯨油いも天が美味しすぎました。

オマケ

別日に、鯨油を自家製ミツロウと混ぜてハンドクリーム作ってみました。

肌にはよく馴染みましたが、ちょっと独特のケモノ臭が強くて実用的ではなさそう。

(鯨油を精製してにおいの原因の不純物を工業的に取り除けばたぶん大丈夫)

地域のあしもとマイスター(橋本市・高野町)

和歌山県高野町在住。現場のフィールドワークを通してその土地ならではの地域資源を掘り起こし、地域づくりにつながる高付加価値商品開発や体験プログラムの企画造成支援や実践を行っています。そのスキルも活かして皆さまのまだ見ぬ和歌山県をお届けしていきたいと思っています。民俗学と発酵と和の薬草と昆虫食と染色のイベントもしています。

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