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QR決済が電子マネーを超える

久保田博幸金融アナリスト
(写真:當舎慎悟/アフロ)

 7日に日本経済新聞に「QR決済、利用額・回数で電子マネー超え」との記事が掲載されていた。

 「日銀と日本クレジット協会、キャッシュレス推進協議会のデータを比べると、キャッシュレスの決済回数はクレジットカードが約158億回、QRコード決済が約70億回、交通系ICサービスなどの電子マネーが約59億回だった。QRコード決済回数の内訳をみると、PayPay(ペイペイ)が約47億回と全体の6割超を占めた」(7日付日本経済新聞)。

 キャッシュレス決済では依然としてクレジットカードの割合が最も高いものの、交通系ICサービスなどの電子マネーをQRコード決済が上回るというのはある意味驚きでもあった。

 PayPayはテレビCMなどでも大々的に宣伝しており、ポイント還元なども打ち出していたことで、特に若者の利用が増加していたものとみられる。また、店舗側にとってのQR決済は導入しやすい面も普及の拡大要因となっていたようだ。

 ただし、ポイント還元は体力勝負の消耗戦ともなりかねず、これも意識してかPayPayは他社のクレジットカードを利用できなくする措置を表明していた。しかし、8月に予定していた利用停止措置を25年1月まで延期する事態になった。

 「QRコード」は日本の発明品であり、「QRコード決済」は現金への信用度があまり高くない中国で大きく拡大していたものであるが、果たしてそれが現金の信用度の高い日本で受け入れられるのかは疑問であった。

 しかし、現実には利用額・回数で電子マネーを超えることとなった。小銭を持たなくても済む上にポイントも付くことで、近所コンビニなどで良く利用するという人も多いのであろう。

 QR決済イコール、キャッシュレス化ではない。また、経済産業省によるキャッシュレス決済額比率の36%(2022年)の数値についても、日本のキャッシュレス化が遅れていることを示したものではないと思う。しかし、個人の買い物の仕方にも変化が出てきていることは確かなのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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