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緑のきしめんも登場! 名古屋の夏の風物詩「きしころスタンプラリー」が開催

大竹敏之名古屋ネタライター
「きしころスタンプラリー」対象メニュー、チトセ屋のSiSo、980円

個性豊かな麺が揃うスタンプラリー

名古屋の夏の風物詩となった「きしころスタンプラリー」。その第10回が2024年7月1日~8月31日まで開催されています。

きしころ=冷たいきしめんを食べ歩きするこの企画。ラリー限定のユニークな一品に出会えるのも楽しみのひとつです。

「きしころ冷えてます」のタペストリーが「きしころスタンプラリー」参加店の目印
「きしころ冷えてます」のタペストリーが「きしころスタンプラリー」参加店の目印

冷製パスタ風だがしっかり和風の味わいが

中でもとびきりインパクトのある一品が「チトセ屋」(名古屋市東区)のSiSo(シソ)。何と鮮やかなグリーンのきしめんなのです。

「つゆに青じそ(=大葉)で色をつけています。開発の段階では、ペパーミントグリーンみたいに鮮やかになりすぎてしまったり、くすんでしまったり、ちょうどいい色合いにするのが難しく完成までに2ヶ月かかりました」と店主の櫻井隆弘さん。企業秘密ですが隠し味に他にも様々な食材を使用しているといいます。

チトセ屋のSiSoは980円。手間がかかっている割にかなりお値打ち
チトセ屋のSiSoは980円。手間がかかっている割にかなりお値打ち

何はともあれ実食。目の前に運ばれてきた一皿は確かにまぎれもなく緑色。麺ではなく、つゆに色がついていて、上には赤いトマトときざんだ青じそが。このつゆに負けないインパクトなのが幅広い麺。一般的なきしめんの2倍ほども幅が広く、すべすべもちもち。この麺につゆがのって、口の中に青じその爽やかな香りが広がります。もうひとつのトッピングの豚肉もしっかり炙ってあり香ばしく、さっぱりした味わいの中でパンチを利かせてくれています。

バジルを使った冷製パスタっぽくもありますが、和風ダシが利いているのであくまできしめんらしい落ち着きある和テイスト。パスタ好きにも、きしめんツウにもウケるんじゃないでしょうか。

チトセ屋3代目の櫻井隆弘さん。伝統ある手打ちにこだわりながらも、20年ほど前から幅広のきしめんづくりに取り組む。店は昭和初期創業。地下鉄高岳駅から徒歩10分
チトセ屋3代目の櫻井隆弘さん。伝統ある手打ちにこだわりながらも、20年ほど前から幅広のきしめんづくりに取り組む。店は昭和初期創業。地下鉄高岳駅から徒歩10分

SiSoはラリー期間中の7、8月のみの限定メニュー。実はこのお店、昨年のスタンプラリーではピンク色のきしめん、その名もPINKを出していて、今回のSiSoもおそらく今シーズンのみ。ラリー期間中に足を運ばなければおそらく食べるチャンスはもうありません。(関連記事:「衝撃のピンクのきしめん! 進化する名古屋めしの驚きの味わいとは?」 2023年8月11日)

「手間ばかりかかってほとんど儲かりませんからね(笑)。ラリーはきしめんを盛り上げるお祭りだから、この時だけ出せるものをつくりたいんです」と櫻井さん。インパクト抜群のグリーンのきしめんで、その心意気を是非味わってもらいたいものです。

きしめんファンを拡大させた「きしころスタンプラリー」

「きしころスタンプラリー」は2015年にスタートし、2024年で10年目。毎年、名古屋市内を中心におよそ40店舗が参加。昨年からは東京のうどん店もエントリーしています。

「スタンプラリーをきっかけに、多くのお客さんがきしめんの魅力に気づいてくれたと感じます。ラリーに参加してくれるお客さんは年々増えて客層も幅広くなり、ラリー期間以外でもきしめんを注文してくれる人が増えています」とはスタンプラリーを主催する東麺類組合会長で「かどまる」店主の日比野宏紀さん。「きしめんは本当に店によって麺の形状も味わいもまったく違い、きしころだと温かいきしめん以上に麺の違いがよく分かる。食べ歩きする楽しさがあるんです」といいます。

「きしころスタンプラリー」発起人である東麺類組合会長の日比野宏紀さん(右)。左は長男で「かどまる」4代目の日比野宙(そら)さん
「きしころスタンプラリー」発起人である東麺類組合会長の日比野宏紀さん(右)。左は長男で「かどまる」4代目の日比野宙(そら)さん

ブームの幅広きしめんに対抗し「幅六きしめん」も!

例えば、チトセ屋のSiSoとは好対照の魅力を体験できるのが「森田屋」(名古屋市東区)の幅六きしころです。

「最近は幅広麺を出す店が増えているので、あえて逆を狙って、一般的なきしめんの6割程度の麺=“幅六”を打っています」と店主の玉津亮さん。具もねぎ、しょうが、大根おろし、かつおぶしなどの薬味のみでいたってシンプル。その分、薄くて細いのに弾力のある麺の個性を存分に堪能できます。

「森田屋」の幅六きしころ800円。同店は1888(明治21)年創業と伝わる名古屋屈指の老舗。歴史散策ルートとして人気の白壁「文化のみち」エリアからもほど近い。地下鉄高岳駅から徒歩約15分
「森田屋」の幅六きしころ800円。同店は1888(明治21)年創業と伝わる名古屋屈指の老舗。歴史散策ルートとして人気の白壁「文化のみち」エリアからもほど近い。地下鉄高岳駅から徒歩約15分

変わり種もあれば正統派もあり。「きしころスタンプラリー」で名古屋名物・きしめんの真の魅力、新たな可能性にふれてみてください! (※参加店の情報は愛知県麺類組合HP参照のこと)

(写真撮影/すべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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