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銀行主導のスマホの個人向け送金サービスが10月に開始、PayPayなどの個人間送金と何が違うのか

久保田博幸金融アナリスト
(提供:イメージマート)

 大手銀行などが主導するスマートフォンを通じた個人向けの送金サービスが10月にスタートすることになった。このサービスは、10万円以下の個人間の送金を対象とし、大手銀行の三菱UFJ、三井住友、みずほ、りそななどが共同で設立した決済サービス会社を通じてことし10月11日から、順次、スタートする。

 すでに個人間の送金アプリは存在している。PayPayなどはスマホによるキャッシュレス決済とともに送金も可能となっている。このため若者などを主体にすでに利用している人も多いのではないかと思う。そこに果たしてこの銀行のアプリが入り込む余地があるのであろうか。

 メガバンクらが推進する「ことら送金サービス」が10月11日よりスタートする。「ことら」に対応した銀行間であれば、10万円以下の個人間送金が手数料無料になる場合もあるなど、小口の資金決済における利便性向上を図る。ことらは、メガバンクが中心となり設立された、小口資金決済のための決済インフラである。

 ことら対応銀行間であれば、個人口座間で送金手数料を少額に抑えて、小口送金(10万円以下)が可能となる。手数料はアプリ事業者が決めることになっているが、三井住友銀行やWallet+では手数料無料を予告している。

 ここで注意すべきは、ことら自体のアプリはなく、各金融機関の決済アプリなどを通じての利用となる点。サービスには大手銀行や地方銀行など37行が参加を表明し、三菱UFJ銀行と三井住友銀行とみずほ銀行は8日、全国の金融機関が加盟する決済アプリ「Bank Pay」を通じて10月11日から無料で送金できる。

 つまり「ことら送金サービス」の利用に際しては、メガバンクは決済アプリ「Bank Pay」を通じて行うことになる。「ことら送金サービス」を使うことで「Bank Pay」の普及を促すという意図もありそうである。PayPayやKyash(キャッシュ)、LINE Payなどでは個人間送金も可能になっており、すでに個人間送金を利用している人には、必要ないかもしれない。

 「Bank Pay」の利用に関しては、加盟店側としては加盟店の手数料率が1%台と安く、ひとつの銀行と契約するだけで、全口座引き落とし対応が可能、3営業日後に入金となるなどメリットは大きい。

 それに対して、利用者側からするとポイント還元などを行っているPayPayなどに比べて魅力が欠ける。「Bank Pay」を使うインセンティブに乏しいといえる。銀行の決済インフラを利用するので安心という側面はあるが、それよりも還元セールの方が魅力という利用者は多いであろう。

 スマホ決済はあまり使っていない人、もしくはそういう相手と個人間送金をする場合には、より安心な「ことら対応のBank Pay」を使う機会はあるかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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