国民が想う「日本のあるべき姿勢」を「対新興国姿勢」「軍事的役割」の観点から確認する
経済支援は積極意見が多数派
多方面で世界各国とのつながりが密になった昨今、様々な国との関係強化が自国の発展にもかなう場合が多い。国民は「日本はどのような姿勢を見せるべき」と思っているのか、米国の民間調査会社PewResearchCenterが2016年10月に発表した、定点観測による国際調査から日本に関わる項目を抽出分析した報告書「Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy」(※)をもとに、いくつかの観点で確認する。
次に示すのは新興国に該当する国との間における、経済的関係の姿勢について、賛否を尋ねたもの。いずれの選択肢でも同意派が多数を占め、経済的な関係強化には好意的な人が多いことがうかがえる。
新興国との経済的関係の強化はやもすると国内企業の圧迫につながる可能性もあり、また対外援助は費用対効果の観点で疑問視されるケースの存在も否定できないものの、おおむねどの選択肢でも好意的意見が多数派となっている。報告書の本文では一部属性別の回答率も示されているが、例えば新興国への対外援助の増加に関しては、男性は74%が同意を示しているのに対し、女性は58%に留まっている。
他方、今件報告書には日本人に対して行った「世界経済のけん引役的国家はどこか」との質問の回答もあるが、それによれば日本と回答したのは6%のみで、アメリカ合衆国との回答は61%、中国との回答が24%と記されている。
軍事方面では限定的な役割が望まれている
経済面では積極姿勢を示すべきとの意見が多数を占めているが、軍事面では限定的な役割の維持を求める声が多い。
2016年春では1年前と比べて積極姿勢への賛意が6%ポイント増えているが、少数派でしかない。6割以上は(現状の)限定された役割を維持すべきであり、積極姿勢を示すべきではないとしている。
軍事方面の日本の消極姿勢は他の項目でも表れており、今調査の別項目で質問されているのを一例に挙げると、対テロに対し圧倒的な軍事力での対応に賛意を示すのは日米中インドEUの中で日本が唯一1割台にとどまっており(他国は4割から6割)、日本では「力に頼りすぎるとより状況が悪化する」との意見が8割近くを占めている。
また報告書の文面のみの説明だが、「日本はGDPの1%前後の防衛費しか計上していない」としつつ、調査対象母集団の29%のみが増額を求め(女性より男性の方が回答率は高い)、52%が現状維持、14%が減額を求めているとし、特記事項的に詳しく解説がなされている。その方向性が正しいか否かは別として、特異な姿勢であるとの報告書側のニュアンスを覚えることができる次第ではある。
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※Japanese Back Global Engagement Despite Concern About Domestic Economy
日本国内において2016年4月26日から5月29日にかけて都道府県別に仕切り分けされた上での固定電話番号7割、携帯事業会社の構成比率を元にした携帯電話番号3割に関して、日本語による通話を行い、応答した人が18歳以上であればインタビューを実施した結果によるもの。サンプル数は1000件。年齢、性別、教育、居住地域の人口密集度合いによるウェイトバックが実施されている。