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八戸学院光星、青森を席巻! 2年ぶり9回目の甲子園へ――100回記念大会・青森

川端康生フリーライター
八戸学院光星、2年ぶり9回目の甲子園!(著者撮影)

 圧倒的な強さだった。初戦から準決勝まですべてコールド勝ち。この決勝戦でも6点を挙げ、5試合で実に46得点と爆発的な攻撃力で青森大会を制した。

 弘前学院聖愛も終盤追い上げをみせたが、4対6まで。あと一歩届かなかった。八戸学院光星は2年ぶり9回目の夏の甲子園に挑む。

粘りを見せた聖愛

 まずは敗れた弘前学院聖愛について。

 初回、先頭の鈴木が、初球をライト前へ叩いて塁に出た。プレーボール直後の無死1塁。しかし、このランナーを進められなかった。これが痛かった。

 もちろん2番・成田はバントの構えから入った。ところが八戸学院光星の福山投手の制球が乱れていた。2ボールになった。かえってバントがやりにくくなった。

 結果、ヒッティングに切り換え、ショートゴロ(いい当たりだったが)でダブルプレー。最初のチャンスを広げることができなかった。

 その後は福山投手が復調。打線は沈黙した。2回以降、三者凡退が続き、次のヒットが出るのは5回である。

 この2本目のヒットが蝦名のホームランで、1点を返すことはできたが、6回、7回は再び三者凡退。つまり初回の無死1塁は千載一遇の好機だったのだ。試合の流れを引き寄せるチャンスでもあった。生かせなかったのは本当に痛かった。

 それでも聖愛は粘った。1対6と敗色濃厚な状況で迎えた8回。田崎の右中間2塁打を足がかりに、四球、バントを絡めて、1死2、3塁。ようやくつかんだチャンスに見事な集中力を発揮する。

 9番・五十嵐がセンター前、1番・鈴木がライト前と2本のタイムリーを連打。さらに成田がセンター前ヒットでつなぎ、3番・葛西のレフト犠飛で一挙3点を奪ったのだ。

 さらに2死2、3塁と一打同点の場面。打席には4番・倉本。スタンドの熱気も一気に高まった。

 残念ながら、八戸学院光星の2番手・中村の渾身の速球に三振に倒れたが、そのままの勢いで相手の攻撃を三者凡退に切って取ったあたり。はるか夢球場に詰めかけた高校野球ファンを唸らせるパフォーマンスだった。

 決勝戦らしい白熱した好ゲームだった。

 試合後のスタンドではそんな言葉があちこちで聞かれた。弘前学院聖愛の健闘があったからこそである。1回途中からマウンドに立ち、強力打線に立ち向かい続けた長久保投手の力投も含めて、準優勝にふさわしいチームだった。

青森を席巻した

 優勝した八戸学院光星。

 この試合でも、下山の本塁打を含め、二桁の10安打を放った。これでこの大会を通じて(5試合)放ったヒットは59本。挙げた得点は46点である。青森大会を席巻する圧倒的な打力だった。

 しかし準決勝でもそうだったが、豪打だけのチームではない。

 2点を奪った初回、放ったヒットは2本だった。2回もヒット2本で1点。5回はヒット1本で得点を挙げている。

塁に出たランナーをバントや進塁打で確実にホームベースに近づけていく。そして得点の可能性を少しでも高める。そんな合理的な戦い方である。

 そんなふうにして点差を広げていき、相手のエネルギーをそぎ、その末にドカンと一発……。

 得点の獲り方のうまいチーム、そして勝ち方を知っているチーム。

 猛打のインパクトが強烈だが、実はそれこそが八戸学院光星の本質だと思う。圧倒的な攻撃力は、(本塁打だけでなく)そんなディテールも含めた総合力によって形作られているのだ。

目標は全国制覇

 総合力という意味では、八戸学院光星は守備も素晴らしかった。

 大会を通じて「E」のランプがともったのは1回だけ。得点を獲るのがうまいチームは、無用な失点を与えないチームでもあった。

 この試合でもノーエラー。そればかりか難しいバウンドを難なくグラブに収める二遊間、次の塁を与えない外野手の守り、それにカットプレーの精度など目を見張る守備がいくつもあった。

 そんな守備力を備えているからこそ、相手に付け込まれることなく、完勝の連続で大会を制することができた。

 さて2年ぶり9回目となる甲子園。

 2年前は2回戦敗退。しかし個人的な印象では2011年、2012年の再現は十分あり得ると思う。東日本の数県を見てきただけだが、チーム力は間違いなくトップクラス。攻守走の総合的な力に加えて、やはり打線の破壊力は魅力に映った。

 もちろん全国の猛者が集う甲子園。そして勝ち抜き戦である以上、勝敗には時の運も絡む。

 それでも――優勝インタビューでキャプテンの長南が力強く言っていた。

「全国制覇を目標に、どこにも負けない練習をやってきた」

 太田幸司の一投から始まった青森の夏。舞台はその先へ、県民の悲願に挑む甲子園へ。楽しみである。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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