Yahoo!ニュース

円安はどこまで進むか、その対応策は #円安

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 ドル円が再び上昇基調を強めてきており、8日には147円台後半を付けてきた。このまま大きな節目となる152円をトライする可能性も出てきている。

 昨年9月22日に政府・日銀は大規模な円買いドル売り介入を実施したが、この際にはドル円がターゲットとされる146円に接近したため、実施されたとの見方があった。

 昨年9月22日にどうしてこの日にドル円がターゲット(この前の介入ポイント)とされた146円に接近したのか。

 9月22日に日銀の金融政策決定会合が開かれ、全員一致で現状維持を決定。黒田日銀総裁は記者会見にてフォワードガイダンスに関して、「当面、変更は必要と考えていない」とし、緩和修正するタイミングを問われ、「当面金利を引き上げるようなことはない」と答えた。「当面というのは数か月の話ではなく2、3年と考えてもらっていい」と発言したのである。

 これが円安の原動力となったことはたしかであろう。結局、日銀の頑なな緩和をこのまま2年も3年も続けるとしたことで、投機筋の円売りドル買いを誘うこととなった。

 この介入による効果は一時的なものとなった。

 再び円安はドル高基調となり、10月21日のニューヨーク時間の朝方にドル円は一時151円94銭まで上昇し、32年ぶり安値を更新した。

 この際には、日銀の頑なな金融緩和が主要因というよりも、米10年債利回りが4.33%とほぼ15年ぶりの高水準をつけるなど、米国債利回りの上昇が大きな要因となっていた。このため、米長期金利がこのあと低下基調となり、このタイミングで覆面介入が実施されていたことで、いかにも介入が効果があったかにみえたが、米長期金利の低下に助けられた側面が大きい。

 その後、日銀は2022年12月20日の金融政策決定会合で長期金利コントロールの上限を0.25%から0.50%に引き上げた。これは日銀が円安対策に無回答ということはありえず、そのため金融政策の方向はそのままで技術的な修正が行われた。

 さらに7月28日の金融政策決定会合でも長期金利コントロールの上限を実質的に1.0%に引き上げたが、これも為替対策という意味合いが大きかったとみられる。

 しかし、日銀は緩和方向からの修正を頑として拒み続けており、それが今度はつかれての円安となっている。

 つまり今回の円安に対応するには、米長期金利の低下を待つか、それとも日銀が一方通行的な金融政策をあらためる必要がある。

 公表文の最後をあらためるとともに、マイナス金利政策の解除を行うことで、通常の金融緩和策に戻し、柔軟性を取り戻すことが求められる。それを来年まで待つなどと悠長なことは言っていられなくことも今後は予想されるのである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事