パートやアルバイトなどの短時間労働者の平均賃金の実情をさぐる
・短時間労働者の平均賃金は2017年では男性1154円、女性1074円。
・短時間労働者の平均賃金を年齢階層別に見ると、男性では40代まで上昇を続け、60代でも一部持ち上がりの気配もある。女性は30代で頭打ちとなり、それ以降年とともに漸減。
・短時間労働者の平均賃金は2017年においては大よそ前年比でプラス。業種別では男性の製造業や運輸・郵便業、女性の卸売・小売業やサービス業で大きな伸び。
正規社員をはじめとしたフルタイム出勤の労働者と異なり、パートやアルバイトのように1日の労働時間が短い、あるいは1週間あたりの労働日数が少ない労働者のことを「短時間労働者」と呼ぶ。この立ち位置にある就労者はフルタイムの労働者と比べ賃金は低く抑えられており、時給制が採用されている場合が多い。今回は厚生労働省が2018年2月に発表した、賃金関連の情報を集約した年ベースでの調査「賃金構造基本統計調査」の報告書を基に、短時間労働者の平均賃金の確認を行う。
まず言葉の定義を確認しておく。
・常用労働者…期間の定めの有る無しに関わらず1か月を超えて雇われている労働者か、日々または一か月以内の期間を定めて雇われている労働者のうち4月・5月にそれぞれ18日以上雇用された労働者。
・一般労働者…短時間労働者以外の者。
・短時間労働者…同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、または1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者。
「短時間労働者」は、定義の上では「同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、あるいは1日の所定労働時間が同じでも、1週の所定労働日数が少ない労働者」を意味する。例えば「就業日はフルタイムでの出勤だが、出勤日は週3日」「就業日は一般労働者と同じ平日すべてだが、午後のみの出勤」の場合は「短時間労働者」に該当する。また契約社員の大部分は正規社員と同じ時間帯で働くことから「一般労働者」に該当し、今回の「短時間労働者」には該当しない。
パートやアルバイトの時給に関する話でよく取り上げられるのが、最低賃金制度と最低賃金法。これは都道府県別・産業別で時給単位の最低賃金を法的に定めたもの。例えば東京都の場合は時給958円(2017年10月時点)となっている。
直近となる2017年時点の男女・年齢階層別の短時間労働者における平均賃金(時給)をグラフ化したのが次の図。全体では男性1154円、女性1074円。全体的に女性より男性の方がいくぶん高い金額。
また、男性では40代まで上昇を続け、60代でも一部持ち上がりの気配を見せているが、女性は30代で頭打ちとなり、40代以降は年とともに漸減している。男女別のパート・アルバイトの需要の違いにもよるが、年を経るに連れて就業可能なパートなどの職種の、男女における違いの表れともいえる(同一業態での比較では無いことに注意。また仮に同一業態での比較においても、男女で就労内容は異なる場合が多い)。
前年2016年からの額面変移を見たのが次のグラフ。
具体的には「男性では50代後半以外はすべての年齢階層で、女性は全年齢階層で上昇」「男性は19歳以下、30代後半、50代後半で大幅増加」「女性は20代後半で大幅増加以外はほぼどの年齢階層でも2%前後の上昇幅」の動きが確認できる。女性に対しては年齢を問わずに短時間労働者の需要が高まり、賃金もそれに合わせる形で上昇したのだろう。
参考までに男女別・主要産業別の平均賃金、および去年からの変移(金額)を挙げておく。
男性は卸売・小売業や宿泊・飲食サービス業がやや低めだが、それ以外は大よそ1200円前後で横並び。女性では医療・福祉が飛びぬけているが、それ以外はほぼ横並び。業務の実情を考えれば、医療・福祉はこれでもまだ水準としては低い感はある。
前年比の動向では製造業、運輸・郵便業の大幅な増加が目に留まる。いずれも深刻な人手不足が伝えられていることもあり、賃金の上乗せによる人手の確保に企業が躍起になっているのがうかがえる。他方女性は医療・福祉が天井感はあるものの、それ以外は大よそ一定額の上昇を見せている。特に卸売・小売業のプラス31円やサービス業のプラス29円は大きく、スーパーやコンビニのような店舗における人手不足の実情が思い浮かぶ。
なおこれらの値はあくまでも全国平均であり、地域によって差があること、さらには上記で触れている通り最低賃金法との兼ね合わせもある(今回の平均賃金は当然に最低賃金を上回っているが)ことを忘れてはならない。
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