どのような子供が非行に走ると大人は考えているのか
非行に走りやすい子供は「保護者がしつけに無関心」「スマホなどに夢中な子供」
大人が行う子供への非行防止の注意指導などの活動は、多分に大人が子供へ抱いている「非行に走る危険な状態」を避けるためのもの。では大人はどのような状態にある子供が「非行に走りやすい」と考えているのだろうか。その実態を内閣府が2015年9月に発表した世論調査の結果「少年非行に関する世論調査」から確認していく。
次に示すのは回答者が「このような状態、状況に置かれた少年が非行(犯罪以外に喫煙や飲酒、深夜はいかいなどの不良行為)をしている」と考えているかを示したもの。科学的裏付け、因果関係のあるなしは問わず、回答者が目撃したり、近親者による類似事案を経験しているだけでなく、各種報道などで見聞きした内容も判断材料に含まれる。要は事実か否かではなく、世間一般の認識、関連性を持つとするイメージの数字化である。
もっとも多い回答は、保護者が子供の教育に無関心である状態の少年で、51.5%。次いでスマートフォンやインターネットなどへ過度に傾注している少年とするもので45.3%。ほぼ同率で居場所が無くて孤立している少年が続く。これらの少年に係わる状況は、昨今の少年非行事案に関する報道でも、その大きな要因であると説明されていることもあり、高い同意率が示されている。一方で特に理由・問題があるわけでもない、少なくとも周囲からはそのように見られている少年が非行に走る場合もあるとの認識も、39.6%と4割近くに及んでいる。
「保護者が無関心」は以前から良く少年非行の理由として挙げられているが、それ以外の昔ながらの理由、例えば「友人関係に問題」「保護者などから虐待経験」「学校生活になじめない」「保護者がしつけに厳しい」などは相対的に順位が低くなっている。
回答者の男女別では「保護者が無関心」「友人関係に問題」ではわずかに男性の方が高値だが、それ以外は女性の方が高い値を示している。特に「居場所が無くて孤立」「教育やしつけに厳しすぎる」は男女差が大きく出ている。また「スマートフォンやインターネットなどに依存」も女性の値が高め。これらの少年に対する女性の危機感、非行に走りやすい状況ではないかとする認識の高さがうかがえる。多分に伝聞だけでなく、例えば自分の子供が過度なスマートフォンへの注力を示し、心配している状態にあるなど、実態として感じ取っている部分も作用しているのだろう。
保護者の年齢では中堅層で危機意識が高い
回答状況をいくつかの回答者の属性別に振り分けて集計しなおした結果が次以降のグラフ。まずは回答者の年齢階層別。
「以前に不良行為・犯罪行為のあった少年」は年齢階層別の差はほとんどないが、それ以外では大よそ中堅層が高い値を示し、多様な状況下で少年が非行に走りやすいと認識していることが分かる。特に50代から60代において懸念する声が大きい。他方20代、そして70歳以上は非行リスクとなり得るような状況への懸念は、比較論ではあるが低め。
今調査の別項目では高校生や大学生を持つ保護者ほど、少年非行は悪化している、増えているとの認識を示していることが明らかになっているが、それと連動する形で複数の項目で、高校生・大学生の子供を持つ保護者の値が高い。他方、しつけに無関心、あるいは厳しすぎるといった、しつけをキーワードに含む項目、さらに何ら問題が無いと思われている少年の項目では、小学生の保護者で突出した値が示されているのが特徴的。自身の子供に対する教育、しつけの方針への不安の表れかもしれない。
これらはあくまでも回答者の認識でしかなく、実際の少年による非行との因果関係は立証されていない。他方、世間一般の認識としては、これらの要件で高い値を示している状況ほど、少年非行に結びつきやすいことになる。日々流れ来る少年非行に係わる事案と、それらに対する反応とを見比べると、色々と考えさせられるものがあるに違いない。
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