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井頭愛海を変えた半年の経験

中西正男芸能記者
仕事への思いを語る井頭愛海

 NHKの連続ドラマ「少年寅次郎」(土曜、午後9時)に9日放送分から登場する女優・井頭愛海さん(18)。2012年に「第13回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞し、17年には連続テレビ小説「べっぴんさん」で芳根京子さん演じるヒロインの娘役を演じるなど、順調にステップアップを遂げてきました。今年もここまでに5作品に出演し順風満帆な道のりにも見えますが、知られざる苦悩の日々もありました。

高校卒業がもたらしたこと

 今年の春で高校を卒業したんです。春までは高校生、そして、事務所で結成していたグループとしての活動もあったので、女優のお仕事と三本柱でやっていました。なので、リアルな話、もしその中の一つがしんどくなってきたら、残りの二つを頑張ることで立て直すというか、そういう形でやってきたんです。

 今は女優の仕事一本なので、そういう“心のかわし方”みたいなことがないので、直接そこと向き合うということしかない。

 最初は大学に行ければとも思っていたのですが、スタッフさんとか周りの方々とお話をして、とにかく今の仕事一本でやってみようと。

 今考えると、ここまでこのお仕事と向き合えているのは、大学に行かないという選択肢をとったからだろうし、非常に大きな意味があったと考えています。

 自分としては、大学に行きたいという思いは実は強かったんですけど、行っていないという現実がある。それを悪いものととるのも、良いものととるのも、こちらの受け取り方次第で、今と未来がどんどん変わっていくんだなということも、強く感じています。

苦悩の半年

 あと、実は高校を卒業してからの半年というのは、自分の中で、とても大きな経験をした時間でもあったんです。

 高校に行ってたら、なんでしょう、毎日7時とかに起きて学校に行く。そういう生活リズムがありますよね。ただ、高校を卒業して4月からはこの仕事一本になった。仕事柄、不規則なところもあるし、そこまで毎日朝からどこかに行かないといけないということもない。

 学校がないので、好きな時間に起きて、好きな時に好きなものを食べて…。今から思うと、本当にダメだなと思うような生活を3カ月くらい、自堕落にやっちゃったんです。

 そして、その後くらいに映画の主演が決まった。生活リズムもズレまくって、精神的にも、肉体的にもだらけてしまっていたし、そこに主演という重圧もあって、いろいろなものが一気に重なったのか、すごくしんどくなってしまったんです。

 もともと人としゃべるのがすごく好きなのに、誰とも話したくなくなる。体が動かなくなる。ご飯が食べられなくて、衣装がブカブカになるほど痩せてしまう。

 周りのスタッフさんにも、家族にも、本当に迷惑をかけて、母親からは「もう、このお仕事、やっていくのは難しいんじゃない」とも言われました。

 憧れて、やりたくて入ったこのお仕事なのに、いつしか「お芝居が好きです」とは言えなくなってしまっていて…。

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「またお芝居を楽しめる」

 その後、いただいたお仕事が今回の「少年寅次郎」だったんです。最初はまだしんどい時期でしたから、正直な話、本当にダメなんですけど「芝居が嫌いなのに、なんでやらないといけないんだ」というくらいの気持ちだったんです。

 でも、現場に入ると、主演の井上真央さんがまずとてもフランクに話しかけてきてくださったんです。以前、井上さんとは「明日の約束」という作品でご一緒したんですけど、その撮影の時の話を、私自身が忘れているような細かいところまで覚えてくださっていて、自分からそういう話をしてきてくださったり。

 あと、劇中で楽器を演奏するシーンがあるんですけど、スタッフさんが本当に親身になって練習に付き合ってくださって。

井上さんからにじみ出てくる優しさ。スタッフさんの温かさ。最初からそういうものが私の中に一気に染み込んでいくというか、本当にウソみたいに、自分の中のものが一気に変わって「またお芝居を楽しめる」と直感的に思えたんです。

 映画の主演の時は本当にしんどかったし、何より、そのことで皆さんにご迷惑をおかけした。それは本当に申し訳なかったんですけど、主演をさせてもらったことで、主演というのがいかに大変かが実感として分かりました。

 だからこそ、その大変な主演をしながら、私にも細やかな気遣いをしてくださる井上さんのありがたさ。それもより分かるようになりましたし、自分にとっては、高校を卒業してからの半年は本当に大きな意味を持った時間だったんだなと思うんです。

 このお仕事をしていると、本当に素敵な方とお会いできる。それも、とてもありがたいことだなと思います。

 以前、共演させていただいた片岡鶴太郎さんも本当に素敵な方で、刺激を受けることがたくさんありました。

 鶴太郎さんは全てのことにおいて自分を高めて、いろいろなジャンルのことに挑戦されている。私は東京のお父さんだと思っていますし(笑)、鶴太郎さんがおすすめの美術館なんかも案内してもらったりもしていただいて。

 「べっぴんさん」を見ていただいていたそうで、鶴太郎さんが「あなたは売れるから大丈夫!私が言うんだから、間違いない!」とも言ってくださって。

 そういう一つ一つが本当にありがたいことですし、鶴太郎さんの言葉をウソにしないためにも、自分を磨いて、キラキラした人になっていきたいと思っています。

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(撮影・中西正男)

■井頭愛海(いがしら・まなみ)

2001年3月15日生まれ。大阪府出身。オスカープロモーション所属。幼少時からミュージカル女優への憧れを持ち、12年、小学6年の時に「第13回全日本国民的美少女コンテスト」に応募。10万2564通の中から21人のファイナリストとなり審査員特別賞を受賞する。次世代ユニット「X21」や雑誌「ラブベリー」の専属モデルとして活動し、映画「おしん」やNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」に出演。NHKの連続ドラマ「少年寅次郎」(土曜、午後9時)に9日放送分から登場する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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