「死者1100人以上」北朝鮮の救難ヘリが相次ぎ墜落、全員死亡も
先月25日から3日間、鴨緑江流域に降り続いた大雨で北朝鮮に大きな被害が生じている。
気象庁に当たる気象水門局によると、平安北道(ピョンアンブクト)の天摩(チョンマ)で635ミリ、雲山(ウンサン)で642ミリ、慈江道(チャガンド)の松源(ソンウォン)で554ミリ、満浦(マンポ)で472ミリなど、1年分の降水量の4割から7割以上の雨がたった3日間に降った。
金正恩総書記は、新義州(シニジュ)と義州(ウィジュ)の被災地を視察。国営の朝鮮中央通信は孤立した住民の救助に空軍ヘリが投入され、「7回にわたる救助飛行任務を責任を持って遂行して全員無事に救出する戦果を挙げた」と報じた。
だが、実際の現場は悲惨な様相を呈していたようだ。
韓国の朝鮮日報系のTV朝鮮は、韓国政府当局者の話として、死者は1100人から1500人に達し、ここには無理な救助作業で2次被害に遭った救助隊員も含まれていると報じた。また、悪天候の中で複数の救助用ヘリコプターが不時着または墜落し、中には乗員全員が死亡したケースもあったとも報じた。
(参考記事:【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮 、ICBM発射で死亡事故か…米メディア報道)
韓国の公共放送KBSは、墜落したヘリコプターはロシア製のMi-8とMi-26であり、機齢が30年以上で、部品の不足などでメンテナンスが充分に行われていなかったとの韓国の専門家の意見を伝えた。
一方で中国の新華社通信は、北朝鮮の新義州(シニジュ)と鴨緑江を挟んで向かい合う丹東の住民が、「こんな大水害はこの20数年見たことがない」と述べたと報じた。また、今回の水害は前回2010年よりひどく、鴨緑江沿いの公園や通りは先月29日夜、2メートル以上冠水したとも報じた。
大飢饉「苦難の行軍」の直接的な原因となった、1993年から3年連続して発生した大洪水を彷彿とさせる今回の洪水だが、核兵器やミサイル開発に国力に見合わぬ巨費を投じてきたことを考えれば、金正恩氏の失政の結果だと言っても過言ではない。慢性的な食糧不足に国民の不満がたまる中で、どう対処するかが注目される。
なお2日現在、雨は依然として断続的に降り続けている。