前年比で大きく増加…2018年のサラリーマンこづかい事情をさぐる
・サラリーマンの平均こづかい額は月額3万9836円(2018年)。
・年齢階層別では50代がもっとも多く4万4017円、次いで20代の4万2018円。
・かつてサラリーマンの平均こづかい額は、日経平均株価に1年から2年遅行する形で連動する動きを示していた。最近ではそうでも無い。
日本の就労者の就業職種のうち少なからぬ割合を占めるサラリーマンにおける生活様式は、それらの人々自身はもちろん、日本の社会全体の状況を推し量る一つの指標となる。新生銀行では毎年1回、このサラリーマン(など)の日常生活に関する調査「サラリーマンのお小遣い調査」(※)を行い、その結果を報告書として発表している。今回はその最新版にあたる、2018年6月に発表した「2018年サラリーマンのお小遣い調査」の結果などを基に、直近、そして近年におけるサラリーマンのこづかい事情を確認する。
直近分も含むここ数年における、回答者年齢階層別のサラリーマンのこづかいの実情は次の通り。
全体としては前年の減少傾向から転じて増加、プラス2408円の3万9836円。報告書では「20代の個人年収の増加や、働き方改革による余暇の増加で飲み代の支出が増えたことなどを背景に20代のこづかい額が大きく増加したことが、全体の平均こづかい額の増加につながったと考えられる」と説明しているが、後ほど示す中長期的なグラフから分かる通り、経年調査の限りでは2011年以降はほぼ横ばいを維持しており、2018年の前年比の増加も、誤差領域の動きと解釈した方が道理は通る。
金額そのものは50代がもっとも大きく4万4017円、次いで20代の4万2018円、40代が3万7073円、そして30代の3万6146円と続いている。
前年比では20代が大きく上昇、30代と40代が1000円台の増加、そして50代がわずかな減少。50代の減少は実質的に誤差の範囲内と見ればよいだろう。ここ数年大きく下げていた40代のこづかいが前回年では下げ止まりを示し、今回年で上昇に転じたのは喜ばしい話ではある。
今年だけで無くこの数年続いている傾向だが、20代から50代のサラリーマンでは、給与が一番少ないはずの20代では無く、30代から40代の中年層が一番、こづかいの額面では小さな値を示している。子供がいる世帯が多く、家計内でのやりくり事情が影響していると考えられる。
実際、報告書から内情を確認した限りでは、既婚と未婚で区分すると未婚者の方が平均額は高い。未婚者全体では4万8954円、既婚で子供無し・共働きでも3万5005円、既婚で子供あり・専業主婦では3万5664円にまで額が減る。同時に付き合いも増え半ば強制的な出費もかさむこの年齢階層には、お財布事情が厳しい時代のように見える。
余談ではあるが、公開されているデータを用いて、毎年のサラリーマンのこづかい状況の推移と、日経平均株価(年末の値、2018年は6月29日終値)をかぶせると次のようなグラフが完成する。
グラフの形状からの推測、さらには過去の報告書では具体的に指摘されていたが、1991年以降のバブル崩壊後においては、サラリーマンのこづかい額は日経平均株価に1年から2年遅行する形で連動する動きを示していた。これはまさに景気対策・政策の実行と、その成果が民間ベースにまで浸透するタイミングと近いもので、興味深い傾向でもある。
2018年においては前年と比べて株価は下落した(時系列上では数百円ほどのマイナス)、つまり経済そのものが軟調さの気配を見せていることになる。しかしながらこづかい額は前年から大きな変化は無し(前年比プラス2408円も、長期グラフで見ると大した変化では無いのが分かる)。それどころか2011年以降はほぼ変化の無い状態が続いている。世の中の実情として株価は上がっているのに、こづかいがさほど変わらないのは厳しい話に違いない。
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※サラリーマンのお小遣い調査
直近年分となる2018年分は2018年4月12日から16日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2713人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料では多くを占める会社員は男性1252人・女性791人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が40.0対60.0、女性は59.9対40.1。今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけでは無いことに注意。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。