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10月は今年最大の値上げラッシュ、家計負担は食品で年約7万円増、金利があれば負担が少しは和らぐのに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 食品や家電など幅広い製品の価格が10月から一斉に上がる。帝国データバンクによると、食品の値上げは約6600品目に達し2022年の月別で最多になる。家計の負担は食品だけで年約7万円高まる見込み(29日付日本経済新聞)。

 アサヒ、キリン、サントリー、サッポロのビール大手4社は1日から、主力ビールの出荷価格を引き上げる。清涼飲料もサントリー食品インターナショナルがペットボトル入りの主力商品を1本あたり20円引き上げる。

 穀物や砂糖などの原材料価格がウクライナ危機で高止まりしているほか、電力料金なども上がり続けている。外国為替相場の円安も進んでおり、今春などに引き上げた製品を再値上げする動きも相次ぐ(29日付日本経済新聞)。

 ドイツ連邦統計庁が29日発表した9月の消費者物価指数(速報値)は、欧州連合(EU)基準で前年同月比10.9%上昇した。統計で遡れる1997年以降で過去最高となった。これは政府のインフレ対策が8月で終了した反動も出た側面もあったが、エネルギーを中心に幅広い品目が値上がりしていることも影響した。

 日本の消費者物価指数は8月分の生鮮食品を除く総合指数で、前年同月比プラス2.8%となっていた。ここからさらに上昇していくことが予想される。携帯電話料金引き下げの反動分もあるが、それ以上に最大規模の値上げラッシュによる影響も受けよう。

 ドイツと同様にエネルギーを中心に幅広い品目の値上がりが日本でも続いている。ドイツの二桁の上昇とはだいぶ距離があるとの見方もできるが、日本の消費者物価指数の前年比プラス2.8%は消費増税の影響を除くと1991年9月の2.8%以来、30年11カ月ぶりの上昇率であったことにも注意が必要となる。

 つまり、日本でもここ30年経験していなかった物価の上昇となっている。すでに企業物価指数は8月が前年同月比プラス9.0%と二桁に迫る勢いとなっている。これには円安の影響も大きく受けている。

 価格転嫁も進みつつあり、円安は継続している。賃金の上昇が追いつかず、それはつまり家計の負担も大きくなる。

 さらに通常であれば、物価の上昇は金利の上昇を促す。米国では3%から4%の金利が付いている格好となっている。100万円預けていれば年3~4万円の利子が付く。これにより家計の負担が少しは和らぐが、日本ではその金利がゼロ%に押さえ込まれているのはどうしてだろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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