円安が再燃し、ドル円は139円台、140円も視野に。FRBと日銀の金融政策の方向性の違いが明確に
ドル円が再び139円台に乗せてきた。このまま円安ドル高が進むと7月14日につけた139円39銭が視野に入ってくる。ここを抜いてあっさりと140円台に乗せてくる可能性がある。
この背景にあるのが、米国の中央銀行にあたるFRBと日本銀行の金融政策の方向性の違いにある。
注目されたワイオミング州ジャクソンホールで開催されているカンザスシティ連銀主催のシンポジウムでのパウエルFRB議長の講演では、インフレの抑制について「やり遂げるまでやり続けなければならない」と利上げ継続を明らかにした。
成長鈍化などの痛みを伴ったとしてもインフレが抑制されるまで、当面金融引き締めが必要という見解を示した。パウエルFRB議長は「歴史は時期尚早な金融緩和を強く戒めている」と市場の楽観的な予測(来年の利下げ観測)を強くけん制した。ほかのFRB当局者からも「利上げ実施後に金利を据え置く」方針に支持を示す発言が相次いだ。
パウエル議長は以前、「ボルカー氏(元FRB議長)は常に自分が正しいと思うことを実行し、歴史に判断を委ねた。非常に不人気で批判も浴びたが、仕事に専念し、静かに立ち去った」と先人の足跡を評価した。
パウエル議長も、たとえ景気に影響が出ても、ボルカー議長のようにインフレ封じ込みを最優先させる姿勢を明確にしたのである。
26日の米国の10年債利回りは3.04%と小幅な上昇にとどまっていたものの、29日の東京時間には3.11%と3.1%を超えてきた。
カンザスシティ連銀主催のシンポジウムには日銀の黒田総裁も出席していた。現地の会見で黒田総裁は、欧州各国や米国と大きく異なる日本の経済情勢について説明。賃金と物価が安定的かつ持続可能な形で上昇するまで、持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はないと語った(28日付ブルームバーグ)。
日本でも物価が上昇しつつあるなか、日銀は通常の、ではなく戦時下のような非常時対応の強力な金融緩和策を続けている。それを改める姿勢を一切みせていない。それどころか長期金利を0.25%に押さえ込むのに必死となった。
これらを受けて、日米金利差の拡大が再認識され、円安ドル高が加速しつつある。これは日本経済にとって良いことなのであろうか。日本でのさらなる物価上昇要因となる円安を誘引させている日銀のこの姿勢に誤りはないのか。あらためて問いたい。