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政治的なテーマは公共施設で話してはいけない!?さいたま市の条例への疑問

原田謙介政治の若者離れを打破する活動を10年以上
(写真:アフロ)

さいたま市で起こっていること

「市民活動」は「政治」に関わってはいけないというさいたま市議会の判断への疑問

数日前に上記の記事を書いた。内容としては以下である。

市が指定管理として業務を委託しているさいたまNPOセンターにおいて”政治活動”を行っている団体が多数あることを問題視した議員が、

指定管理制度をやめ、市の直営化へと移行するようにとの条例案を出した。

自分の見解として、

「政治的テーマ」を扱う団体を、「市民活動」ではないという認識があるとすれば、それはおかしいということ。

「政治家」なる肩書の人以外は、「政治的テーマ」に関わってはいけないのか?市民が街や社会を良くしようと自分たちで動くことを容認しないのか。市民はお祭りの運営やゴミ拾いでもしておけばいいということなのか?

いろんな意見があり、対立するものだってもちろんある。一人一人の市民が主体的に社会に関わる意識を持つことが、民主主義の力になる。

出典:数日前の自分の記事より

と述べた。

今回はこの記事の 続報として書いている。

まずは、結果として16日の議会でこの条例は賛成多数で可決された。

内容に関していくつかのメディアでも報道がなされている。

NPO運営施設 市が直営化へ- NHK 首都圏 NEWS WEB

http://www.nhk.or.jp/shutoken-news/20151016/5739121.html

条例案を提出した自民党の青羽健仁市議会議員は、「憲法9条や原発、拉致問題など、政治的なテーマを取り上げる団体に、公共施設が便宜をはかることは問題だ。決して表現の自由や政治活動を否定しているわけではない」と話しています。

出典:NHKニュースより

政治利用している…さいたま市民活動センター、NPOの運営停止へ

改正理由について自民議員らは「一部の団体が政治利用している」などと指摘。これに対し、センターの利用者らは「権力による自由な活動の制限を招きかねない」として、反発を強めている。

出典:埼玉新聞より

そもそものさいたま市の”市民活動”の定義

なぜこのような状況に至っているのか改めて整理をしてみる。

1:さいたま市民活動センターは市の施設

この施設はさいたま市からの指定管理者としてさいたまNPOセンターが運営を行っている。つまりは市の施設である。

2:市の条件の範囲内での運営が必要

つまりは、指定管理者としても市の定める条件の範囲内での運営を行う必要がある。

3:さいたま市市民活動サポートセンター条例

市が、市民活動サポートセンターの活動については「さいたま市市民活動サポートセンター条例

」に定められている。

その冒頭に

さいたま市市民活動及び協働の推進条例第8条の規定に基づき市民活動(推進条例第2条第2号に規定する市民活動をいう。以下同じ。)を支援し、その活性化を図るため、さいたま市市民活動サポートセンターをさいたま市浦和区東高砂町11番1号に設置する。

出典:さいたま市市民活動サポートセンター条例

と書かれている。

つまりはそもそもの「さいたま市市民活動及び協働の推進条例」に基づいて運営されていくということ。

4:さいたま市市民活動及び協働の推進条例とは

この条例においては市民活動を以下のように定めている

市民活動 市民が地域又は社会における課題の発見及び解決のために、自発的かつ自主的に行う非営利で公益的な活動をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。

ア 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、又は信者を教化育成することを目的とする活動

イ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動

ウ 特定の公職(公職選挙法(昭和25年法律第100号)第3条に規定する公職をいう。以下同じ。)の候補者(当該候補者になろうとする者を含む。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とする活動

出典:さいたま市市民活動及び協働の推進条例

色々と並べたがまとめると

「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動 」をさいたま市は「市民活動」ではないと条例で定めている。そして、この条例に基づいた運営を求められる市民活動サポートセンターは「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動」を、市民活動として認めてはならない。

ということになる。

そのため今回の決議に至るわけだ。

発議者の青葉健二議員の発言

発議者である青葉議員は6月議会の際にもこのことについて質問をしておりその発言の内容を一部抜粋する。

市民活動と政治活動の線引きというのは非常に難しいところがあるのだけれども

少なくとも原発問題だとか集団的自衛権と憲法9条とか。私、誤解がないように申し上げておきますけれども、日本共産党の皆さんはよく知っているとおり私は護憲派なのだ。だから、これについて反対するつもりは全くない。だけれども、公共施設でこういうことやること自体に問題がある

地元の自治会があそこがあいているから使わせてくださいと言うと、そこはNPO専用ですから、あなたたちはだめだと言われるのだ。だれのための施設だというのだ。

出典:さいたま市議会議事録より

さらにNHKのインタビューの中で以下の発言をされている。

いわゆる国論を2分するような、市民の議論を2分するようなね、テーマを扱ってらっしゃる。そういった団体を市民活動として優先利用させている所に問題があるだろう

御懸念をされているようにそういう市民活動の制限とか委縮させるということは全くないということ

出典:NHKニュース

青葉健二議員の考えを読みほぐすと

1つ目は、さいたま市の条例の中で「市民活動」から除外されている「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動 」を行っている団体が登録されていること。

2つ目は、これらの団体が市の施設を優先利用しているということ。登録団体のみしか使えないスペースがあり、自治会などは使えないことをおかしいと思っている。

3つ目は、「市民活動を委縮させるつもりはない」ということ

4つ目は、「国論を2分するような」ものは市民活動ではないということ。影響の範囲が市の範囲をこえているからという考えだと思う。

これらになるのかなと。

※ただ、青葉議員に直接話を伺ったわけではないのでインターネット上で調べられる範囲の話であることに留意ください。

「市民活動」の定義を曖昧にしたままのセンターの運営がなされてきたことが今回の議論へとつながる

上記にも述べたように、センターはさいたま市の条例の範囲内での運営が求められている。

となればその中にある、「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動 」は市民活動ではなく、センターの利用対象とはならないことは知っているはずだし、さらにいえば使用者に対してこのことを徹底する必要がある。

しかし、正直「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動 」というのが何なのかは様々な解釈ができるだろう。

NHKのニュース内で利用者の以下の声が取り上げられている

拉致問題の団体の男性は「拉致被害者を救う活動は人権活動であり、なぜ問題なのか理解できない。今後、活動を理解してもらえるよう訴えていきたい」

出典:NHKニュース

この方の意見もわかる。しかし、同時に「拉致問題の解決は政治的な課題だ!」 と言われても自分は納得する。

つまりは、曖昧なままの運営が続いてきたことにより、「市民活動」に対しての考え方がセンターの運営の中での考え方と違う青羽議員からすれば納得いかないということだろう。

そしてさらに、自治会が使えないのに、”政治活動”をしている団体が使えることへの怒りもあり今回の決議に至ったのだと思う。

そもそも、さいたま市の「さいたま市市民活動及び協働の推進条例」の見直しを

この問題の根本は「さいたま市市民活動及び協働の推進条例」にあると思う。

この条例は

市の責務並びに市民、市民活動団体、大学及び事業者の役割を明らかにするとともに、基本的な施策を定めることにより、市民活動及び協働の推進を図り、もって活力のある地域社会の実現に寄与することを目的とする。

出典:さいたま市市民活動及び協働の推進条例

とある。

俺からすれば、活力のある地域社会を実現するためには政治が全く関わらない範囲で活動を行うなんて現実的ではないと思う。

なので市民活動から「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動 」を除外するということがおかしい。

繰り返しになるが、まずこの除外対象がよくわからない。「政治上の主義」とは何か?

ゴミ拾い団体は市民活動であり、政治活動ではないということに意義を唱える人は少ないだろう。 では、その団体が団体の活動の際に「受動喫煙防止条例の徹底が必要だ」とでも言っていれば市民活動から除外されるのか!?

青羽議員の主張がわからんでもないが、これだけ市民との協働や、民間の力が求められている時代だ。政治が政治家がなんでもするという時代ではない。

センターの利用の在り方を見直すのではなく、根本の「市民活動」の定義から見直す必要があるという議論を進めて欲しいなと思う。

集まる「場」がある可能性

少し余談にはなるが最後に「場」について2つほど。

昨年ミャンマーに行った際にこんな話を聞いた。軍事政権が強権的な力を持っていた際には、人が集まることができる集会所的な場所をどんどん閉鎖した。なぜなら人が集まるということはそこで様々な企みが行われ、もしかすると政権に不利な力が出てくるかもしれないから、集まる場所をそもそもなくそうという考えだ。

さらに、昨年ヨーロッパに行った際に「ユースセンター」の視察を行った。若者と社会をつなげるために、あるいは若者の自発的な活動を促すために、若者がふらっと訪れることができる場所が必要だ。決して社会貢献などの目的を持ってくる必要はない。だけど、集っている若者同士の会話の中で勝手に色々な企画が生まれる。

「場」があるから一人ではなく複数人で集うことが出来、複数人で集うことにより色々な動きにつながるわけだ。

「場」の運営方法を見直すことはあっても、「場」が市民側の論理ではないルールによって一方的に制限されることはなってはならない。

さいたま市のこのセンターに関しても話し合い歩み寄りが行われて、相互の理解が増し、新たな運用へとつながって欲しい。

NPO法人YouthCreateとしても「場」を作りたいという妄想はある。

政治の若者離れを打破する活動を10年以上

1986年生まれ。岡山在住。愛媛県愛光高校、東京大学法学部卒。「学生団体ivote」創設。インターネット選挙運動解禁「OneVoiceCampaign」。NPO法人YouthCreate創設。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。大学非常勤講師や各省有識者会議委員などとして活動を広げていく。18歳選挙権を実現し、1万人以上の中高生に主権者教育授業を行う。文科省・総務省作成「政治や選挙等に関する高校生向け副教材」の執筆者でもある。2019年参議院選挙・2021年衆議院選挙に立候補し敗れる。元岡山大学非常勤講師。元グローバルシェイパー東京代表。元中野区社会福祉評議会評議員

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