セントラルバンカーであったバーナンキ議長
12月17日、18日に開催されたFOMCでは、量的緩和政策の縮小、いわゆるテーパリングの開始を9対1の賛成多数で決定した。ローゼングレン・ボストン連銀総裁が時期尚早と反対した。
来年1月から月額850億ドル規模の証券購入額を100億ドル減らし750億ドルとする。内訳としては米国債の買入は450億ドルから400億ドルに、エージェンシー発行モーゲージ債(MBS)は400億ドルから350億ドルに減額する。
今回、MBSの減額はないのではとの見方も一部にあったようだが、そこまで市場に配慮する必要はないと思われる。今後は淡々と買入額を米国債、MBSともに減額してくることが予想される。
失業率が6.5%を下回り、かなりの期間が経過するまで事実上のゼロ金利政策を維持するとの方針も表明したが、6.5%という数字は維持されていることもあり、これはフォワード・ガイダンスの強化といえるかどうか微妙なところであろう。むしろこれはいずれ近いうちに6.5%近辺まで低下する可能性があり、あまり早く利上げ観測が出ても困るための予防線を張ったように思われる。
いずれにせよ、バーナンキ議長は5月の段階で年内のテーパリングの可能性を指摘していたが、それを現実化させた。10月の米政府機関閉鎖が余計な出来事となったものの、10月と11月の雇用は改善し、経済指標も景気の回復を示すものが多くなり、最大の懸念材料であった財政協議についても解決に向けて動いていたことで、予定通りのテーパリング開始決定が可能となった。
実質的なゼロ金利政策は維持されることで、テーパリングの開始は金融引き締めとは言いがたいものの、当然ながら緩和とは反対の方向となる。FOMCで緩和策ではない政策を決定したのは2006年6月のFOMC以来、7年半ぶりのこととなる。これはつまり、サブプライム・ショック、リーマン・ショック、ギリシャ・ショックと世界の金融経済を襲ったショックがやっと沈静化しつつあることを示す出来事であると考えられる。テーパリング開始の決定での株高を見ても、市場はむしろこれを好感した。
今回のテーパリング開始の決定は、米国の雇用をはじめとする経済環境や、米財政協議の行方なども要因となったろうが、バーナンキ議長は何とか任期中に道筋をつけたかったと思われる。1月のFOMCでは連銀のメンバーの入れ替えもあり、いずれ理事の一部も替わる。年を跨ぐより可能ならば12月のFOMCで決定したかったのではなかろうか。
ハト派とされるイエレン氏も副議長という立場もあろうが、テーパリングの開始には反対はしなかった。バーナンキ議長は元々は学者ではあるが、今回の決定をみてもそれ以上にセントラルバンカーであったように思う。これはイエレン氏も同様であり、あまりハト派だという思い込みも禁物となろう。
非伝統的手段はあくまで非常時のものである。FRBのテーパリングの開始により、日銀との政策の違いが次第に鮮明になってくる。FRBは深みにはまる前に脱しつつあるが、日銀は底なし沼に入り込んだかの印象であり、これはいずれ大きな副作用を生じさせる可能性も秘めていると思われる。