波乱含みの原油先物価格の先行き
中国で新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増え、経済活動の鈍化で原油需要が減るとの観測が強まり、15日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物は大幅続落となった。
WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の4月物は前日比6.57ドル安の1バレル96.44ドルで引けた。これはウクライナ紛争が始まる前の水準となる。
3月7日には一時130ドルを超え、2008年7月以来、13年8か月ぶりの高値水準を付けていたが、そこから今度は下落し、100ドル割れとなるなど、高値波乱の様相となっている。
ロシアのウクライナ侵攻が、この原油などエネルギー価格の乱高下の要因となっていることは間違いない。先行き不透明感が強いことで投機的な動きも入りやすい。
ここにきて、あらたなニュースも飛び込んできた。ロイター通信によると、ロシアはインドに割引価格で原油や商品の購入を持ちかけており、インド政府も前向きに検討しているとか。
さらにはサウジアラビアが中国への石油販売について、一部を人民元建てで価格設定することを中国側と協議しているとの報道も出ていた。
WTI先物価格での100ドル台ではいったん戻り売りも入りそうだが、ロシアのウクライナ侵攻以前もエネルギー価格は上昇基調にあった。これは経済の正常化に伴う原油需要の回復などによるものである。
ロシアのウクライナ侵攻による世界経済への影響も不透明である。そもそもいつまでこれが続くのかも見通しが難しい。
物価高に景気の悪化が同時に進行するスタグフレーションという言葉も見かけることが多くなったが、物価の上昇はさておき、景気が急減速するというのもあくまでひとつの見通しに過ぎない。
物価上昇は景気回復を阻害する側面は確かにあるが、物価上昇の背景としては景気の回復による原油などへの需要増があることで、スタグフレーションに向かうとの見方はあくまでひとつの可能性に過ぎないのではないかと思われる。
いずれにしても現状はロシアのウクライナ侵攻という不確定要素があり、今後の原油先物価格は100ドル近辺での波乱含みの展開が予想される。