旧統一教会と世界平和女性連合(WFWP)の同一性が認められた判決になったと弁護士らが見る理由
司法記者クラブの会見で、弁護士らは、旧統一教会と世界平和女性連合(WFWP)の同一性を認めることを示す判決になったとの見方を示します。だとすれば、世界平和女性連合が旧統一教会の被害者救済を行う弁護士らを訴えることで、逆に勇み足となってしまったことを意味します。
原告(世界平和女性連合)の訴えを棄却
世界平和女性連合は東京地方裁判所に、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の7名の弁護士に対して3300万円を求める名誉棄損の訴えと、司法記者クラブの会見で紀藤正樹弁護士が述べたことに対して、業務妨害などを理由に330万円の損害賠償請求を求める裁判を起こしました。
7月1日に判決が言い渡されて、いずれについても原告に対する「名誉棄損は成立しない」として、訴えは棄却されています。
今回の裁判は全国弁連が、自治体関係者に対して「世界平和女性連合が旧統一教会のダミー団体である」として「WFWP留学生日本語弁論大会のイベントに会場の使用許可をしないようにして頂きたい」という声明を出したことに対して、訴えてきたものです。
解散命令の足固めを自ら行っているというような評価もできる
司法記者クラブで行われた会見で、弁護団長の飯田正剛弁護士は「解散命令請求がだされる前から統一教会は追い詰められて、(言論などの萎縮を狙う)スラップ訴訟を起こしています。本件もその一つですけれども、統一教会側がスラップ訴訟で勝った例はありません。つまり統一教会はますます追い込まれている結果になっています。本件の訴訟でも負けを重ねて、いずれなされるだろう解散命令の足固めを自ら行っているという評価もできる」としています。
「ダミー団体」「かくれみの」的団体との指摘は重要部分において真実である
木村壮弁護士は、裁判の争点の一つとして「世界平和女性連合が統一教会の『ダミー団体』ないし『かくれみの』的団体と表現したことが名誉毀損に該当するかどうか」があり、今回の判決では「世界平和女性連合が統一教会と創始者を同じくしており、統一教会の総裁によって会長が任命されている点、あとは世界平和女性連合の最高の権威が統一教会の教祖にある点を裁判所が認定しており、それを前提に世界平和女性連合が統一教会とほぼ同一であるという認定に基づいて『ダミー団体』『かくれみの』的団体との指摘は重要部分において真実であるとして、正当な論評としている」と同弁護士はいいます。
この点について川井康雄弁護士も同様な見解を述べます。
「裁判所は、一つ目は創設者を同じくする団体であること。二つ目として創設者は文鮮明ですけれども、この世界平和女性連合の会長を任命するという人事的な権限がある。三つ目として、創設者が世界平和女性連合の究極の権威を有する象徴であるとされている(ことは)原告が自認する事実であるとしており、この三つの要件を通じて、実質的に原告である世界平和女性連合と統一教会の同一性を認めるものと判断したわけです」
「これまでは、自治体でこういう団体に貸すべきではないだろうと思っていても、やはり根拠が必要でした。裁判所の判断は、この三つの要件があれば統一教会との一体性が認められる。現在、解散命令請求がされていますが、反社会的な団体との一体性があるということで、使用を認めないとの判断をする一助になるのではないか」(同弁護士)
「違法性はありません」ということを正面から認定してくれました
山口広弁護士は、これまで各自治体に対して世界平和女性連合が施設を借りて日本語弁論大会を開くことに対して「統一教会のダミー団体に会場を貸すことは、新しい被害者を作り出すことになりかねないからやめてほしいと、再三申し入れてきた」といいます。
今回の判決では、本件声明は「本件教団による被害の救済を目的として発足した本件連絡会(全国弁連)が発出したものであり、本件声明の全体をみれば公共の利害に関する事実に関連し、かつ、その目的が公益を図ることにあることを認めることができる」としています。
「判決文では『ダミー団体』『かくれみの』『正体隠し』の指摘について、これは裁判所らしい言葉ですが、『やや穏当を欠く表現が主張されているとしても、意見ないし論評としての域を逸脱した表現とまでは認められないから、いずれについても、違法性を有する表現であるとはいえない』としていて、このぐらいの表現で自治体に要請しても問題ありません。違法性はありませんということを正面から認定してくれましたので、今後も注意喚起していきたい」と山口弁護士は話します。
これからも自治体に働きかけをしていきたい
河田英正弁護士は「被害者救済のために私たち連絡会のメンバーが懸命に関わってきているなかでこういう裁判を起こしてきて、弁護士たちの業務を妨害するようなやり方を行っている。怒りを通り起して、悲しいという思い」と率直な心の内を述べます。
さらに「留学生日本語弁論大会に関しての申し入れは、岡山県に対しても、当時の声明と同時に(許可しないように)申し入れをしましたが、県の方では使わせました。今年も開催されて施設を使用させているという実態があります。しかし、今日の判決は今後の力になるようなものですので、これからも自治体に働きかけをしていきたい」と語ります。
中村周而弁護士は「こういった裁判を受けると、私たちは統一教会に対して萎縮してしまう状況になります。しかし、判決では世界平和女性連合と統一教会は一体という趣旨であり、私たちが声明を出せるということを認めてくれています。今回の裁判所の判断は、こちらの主張をきちっと受け止めてくれたものと理解している」といいます。
警鐘を行うために今回の判決は大きく使える
紀藤正樹弁護士は、この司法記者クラブで「自治体が(会場を)貸すのと、民間が貸すのとでは明らかに次元が異なる。政教分離の観点からも問題がある。貸すこと自体が憲法違反だ」と発言した司法記者クラブでの会見内容をもとに訴えられていますが、これについては、判決では法的見解を述べたに過ぎず、原告の名誉毀損をするものではないとの判断がなされています。
同弁護士は「今回の判決は非常によかった」と話すとともに「『ダミー団体』『かくれみの』『正体隠し』などの表現に対しては『意見ないし論評としての域を逸脱した表現とまでは認められない』と結論づけられていますから、基本的にはお墨付きを得た形ですので、警鐘を行うために今回の判決は大きく使えると思う」と話します。
「貸さない」とする姿勢に梶を切るための追い風になる可能性
木村弁護士は記者からの質問を受けて「踏み込みが足りない判決にはなっていますが、裁判所としてはやむを得ない表現だと思います。ただ(世界平和女性連合と旧統一教会の)一体性が認められなければ『それは事実ではない』ということになりますから、もしそうだとすれば我々の論評は、論評としての範囲を逸脱したということになります。(判決は、論評としての域を逸脱した表現までは認められないとなっていますので)同一性を認めた判決になっていると思う」と話します。
自治体にとって、世界平和女性連合を始めとする教団の関連団体に、施設を貸すかどうかの判断を悩むところですが、今回の司法判断が示されることで「貸さない」とする姿勢に梶を切るための追い風になる可能性があります。
旧統一教会信者の活動の中心には、教義に裏打ちされた布教活動がある
裁判の中で、堀守子会長は世界平和女性連合は旧統一教会とは関係がなく「友好団体」としています。しかし、この団体は信者らで構成されており、私自身も信者時代は、旧統一教会の組織の一つとしての認識でした。誰の目からも、ただの友好団体ではないとみえていたと思いますが、それが司法の場でも示されたといえます。
山口弁護士は今回の判決を通じて「せっかく日本にきて勉強をやっていこうと思っているような外国人の留学生が、(参加をきっかけに)統一教会により勧誘されて人生を間違えることがないようにしていかなければいけない思いを強くした」とも話しますが、旧統一教会の信者らには、教義に裏打ちされた布教活動(自分の下に信者を最低3人作る)と、神様のためにお金を集めることが常に活動の中心にあります。そうした信者らで構成されている団体ですので、イベントなどを通じて布教などの勧誘行為が絶対に行われないとはいえないはずです。
旧統一教会への解散命令の司法判断が近づくなかで、今回の判決は被害の芽をつむという意味においても重要な判断がなされたといえます。