「炎上」に加担する人は2.8%もいる現実
「炎上に加担」は2.8%
インターネット、特にソーシャルメディアの普及に伴い日常茶飯事化した現象の一つに「炎上」がある。定義は多種多様だが、大よそ書き込み・コンテンツに対し、不特定多数の人が否定的発言やそれに対する反論などを行い、注目が集まる状況を意味する。炎上した当事者が意図的である場合と意図せずして生じた場合があるが、いずれにせよ言葉の大元の意味の通り、火柱が上がるかのような勢いで意見が寄せられてしまう。そのような状況をインターネット上で目撃した時に、人々はどのような姿勢を見せるのだろうか。文化庁が2017年9月に発表した定期調査「国語に関する世論調査」(※)の報告書から確認する。
次に示すのは「炎上」の実情を目にした時に、自分もそれに加わって新規の書き込みやリツイート、引用などによる拡散をするかを尋ねたもの。普通の意見としての書き込みや拡散だったものの、結果として炎上しているのに加わってしまったケースもあるだろうが、今件はあくまでも目にした時点で炎上していることが明らかだった時に、どのような姿勢を見せるかを尋ねている。
頻度はともあれ炎上に加担する、参戦するとの意思を持つ人は合わせて2.8%(公開値上は0.5%+2.2%=2.7%だが、報告書では小数第二位以下の実値を合わせた値として2.8%が示されている)。大よそ36人に1人が炎上に加わっている計算となる。さらに「ほとんどしない」は「ごくたまにすることもある」とも解釈できるので、これも合わせると12.9%、大よそ8人に1人の計算になる。
「36人に1人だったらごく少数なのでは」として、炎上事案の実態はごく少数によるものと考えることもできる。しかしこれはあくまでも比率の問題。母数を考慮すると膨大な数になりうる。例えば100人の2.8%は3人足らずだが、100万人なら2.8万人にもなる。
2.8%との値は炎上被害者に「世界の皆があなたを攻撃しているわけでは無い」との実態を認識させるのには十分ではあるのだが、インターネットの利用者数が非常に多いことや、利用ハードルの低いサービスで炎上が発生するケースが多々あるのを思い返すと、「数十人もの人が自分に罵声を浴びせている」ようなものでもあり、それだけで凹んでしまうのは致し方ない。街中で歩いている最中に、突然そのうちの数十人が一斉に自分に向けて指差しをしたら、どのような心境になるだろうか。「炎上」を受けた側の心境は、そのようなものである。
年齢で変わる「炎上」への対応
今件結果を回答者の年齢階層別で仕切り分けしたのが次のグラフ。「大体する」「たまにする」をする派、「ほとんどしない」「全くしない」をしない派にまとめている。
元々インターネットは使っていないので「炎上」に参加するも何もあったものでは無いとする意見の割合は、歳が上になると共に増加していく。これは他のインターネット利用に関する調査結果と同じで、特に問題はない。
気になるのは20代までにおいて「炎上」に参加する意志を持つ人の割合が大きいこと。特に20代では1割を超えている。あるいは若年層においては「炎上」の定義づけが本来のものとは異なる、例えばお祭り騒ぎ程度にしか認識していないのかもしれないが(設問表は非公開なので、設問の上でどのような説明がされているのかは不明。報告書には「インターネットの世界で、いわゆる「炎上」と呼ばれるような状況が生じることについて、そのようなサイトやアカウントに遭遇した場合、書き込みや拡散などを行うと思うか」とあるのみ)、1割もの人が「炎上」に加担する姿勢を示しているのは、憂慮すべき実情ではある。
ちなみに別設問における「炎上」という現象を望ましいかとの問いには、やはり20代が飛びぬけて高い肯定意志を示している。
当人は単なる遊び、お祭り騒ぎ程度にしか考えていないのかもしれないが、場合によっては多くの人にマイナスの影響を与えうる。一度立ち止まり、考える習慣をつけてほしいものではある。
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※国語に関する世論調査
文化庁が毎年実施している調査で、直近分は2017年2月から3月にかけて日本全国の16歳以上の男女に対して個別面接方式にて実施。調査対象総数は3566人、有効回収数は2015人。対象抽出方法などは未公開。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。