お札のデザインを何故、変えるのか
財務省は9日、千円、5千円、1万円の紙幣(日本銀行券)を2024年度上半期に一新すると発表した。紙幣のデザインの変更は2004年以来、20年ぶりとなる。1万円の表は、渋沢栄一、裏は東京駅。5千円の表は津田梅子、裏は藤の花。千円の表は 北里柴三郎、裏は北斎の神奈川沖浪裏となる。
1万円札は40年ぶりに肖像が変更され、5千円札と千円札は2004年以来20年ぶりとなる。このように新しいお札のデザインは20年を目処に変更されているようである。お札のデザインを変える目的は日本経済を活性化させるためとかではなく、偽札防止のためのものであり、その技術の継承も背景にあろう。
そもそもお札に肖像が利用されていることが偽造防止のためである。私たちは人の顔を見分けることに慣れていることから、銀行券の肖像がほんの少しでもずれたりぼやけたりしていると違和感を持ち、偽造防止に繋がるとされている。
以前はひげや髪の毛の細かい描写は偽造されにくい、ということで、ひげの人物が、多くお札の肖像画に選ばれた。その代表格といえたのが以前、1万円札の肖像となっていた聖徳太子である。しかし、現在では偽造防止技術も進み、ひげ縛りはなくなったようで、今回の1万円札の渋沢栄一の肖像にもひげはない。
肖像をはじめとするお札の様式は、通貨行政を担当している財務省、発行元の日本銀行、製造元の国立印刷局の三者で協議し、最終的には日本銀行法によって財務大臣が決める。 お札の肖像の選び方には、特別な制約はないが、日本国民が世界に誇れる人物で、教科書に載っているなど、一般によく知られていること。偽造防止の目的から、なるべく精密な人物像の写真や絵画を入手できる人物であることなどが挙げられている(国立印刷局のサイトより)。
偽造防止技術については、中央に肖像などの図柄があらわれる「すき入れ」もしくは「すかし」と呼ばれるものがある。偽造防止のため、凹版印刷という特殊な方法で印刷し、カラーコピー機等に対する対策として新たに特殊発光インキ(表面の印章部分)とマイクロ文字も採用されている。技術の進歩により、簡単にカラーコピーも可能となるなどすることで、そのような技術に対応することも、新しいデザインのお札を発行することの理由となっていよう。
ちなみにお札の表面にあるハンコは、お札の発行元である日本銀行総裁の印章で、「総裁之印」と篆書(てんしょ)体という字体で書かれている。いわば日銀総裁がお札の価値を保証しているといえる。裏面は、同じく日本銀行でお札の発行、回収などを担当する発券局長の印章で「発券局長」とやはり篆書体で書かれている。