交通事故全体と自転車事故の割合と
自転車の利用の増加と共に、その自転車による交通事故にも注目が集まっている。交通事故全体と比べ、自転車に係わる事故はいかなる現状なのか。その実態を警察庁の報告書「平成27年における交通事故の発生状況」から確認していく。
その報告書によれば、2015年の日本国内における交通事故全体の発生件数は53万6899件(前年比-6.4%)、死者数は4117人(+0.1%)。
今件交通事故発生件数と、公開データ内の「自転車交通事故件数(法令違反のありなしを問わず)」を合わせ、「自転車による事故が交通事故全体においてどのような位置づけ・比率にあるか」を示したのが次のグラフ。事故件数は自転車が第1当事者(最初に交通事故に関与した車両の該当者のうち、過失の重い側。同程度の時には負傷程度が軽い側)・第2当事者(最初に交通事故に関与した車両該当者のうち、第1当事者以外の人)となった件数。さらに自転車同士の場合は1件として数えている。
交通事故件数全体数同様に、自転車による事故件数も減少を続けている。しかし自動車ほど啓蒙活動や安全対策が徹底していないこと、利用ハードルが低いこと(運転免許は要らず、子供でも技術を取得できれば運転可能)、そして自転車の高リスク利用者(若年層、お年寄り)が増加したことなど複数の要因から、減少率はゆるかやなレベルに留まっていた。
結果として「交通事故全体」に占める、「自転車交通事故の件数」比率は増加の傾向にあった。しかし2008年~2009年の21.2%をピークとし、啓蒙活動などが功を奏しだしたのか、それ以降は減少傾向に転じている。2012年では6年ぶりに交通事故全体に占める比率が2割を切り、以降さらに低下を続けている。
この流れは交通事故全体ではなく「死亡者数」に限定した場合でも、大体同じような状況を示している。ただし2008年以降の比率における動きはほぼ横ばいで推移しており、注意を要する状況となっている。
また高齢者の死亡比率が高いのも特徴。65歳以上で2/3近く、60歳以上ならば7割を超えており、さらに増加の兆しがある点にも留意が求められる。
自動車やバイクと異なり、自転車は運転の際に免許も必要とせず、事故の際の当事者の保護装置(シートベルトやエアバッグ)も無く、利用者の多くが十分な保険に入っていない。自転車に乗る際にヘルメットはともかく、バイクに乗る時のような専用のライダースーツを着たり肘・ひざ当てを付ける人は(ロードバイクのような専用の自転車を駆る人以外は)滅多にいない。
自転車で事故が起きた際のリスクは、自転車の方が自動車よりも高いとの考え方もある。もちろん「運転をするな」と禁じるわけではないが、例えば運転の際にはリスクが桁違いとなる「走りながらの携帯電話利用」などもってのほか。くれぐれも安全運転を心がけてほしい。
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