日銀の物価の見方への疑問
2022年最初の金融政策決定会合が1月17日から18日にかけて開催された。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)については賛成8反対1で、資産買入れ方針は全員一致で現状の政策を維持することを決定した。
イールドカーブ・コントロールについて反対したのは片岡審議委員である。片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。
この片岡委員の任期は2022年7月23日。鈴木審議委員の任期も同日となっている。こちらの後任人事も興味深い。
決定会合結果は市場の予想通りとなった。市場では会合結果よりも展望レポートの物価の予測に注目が集まっていた。
展望レポートでは2022年度の消費者物価指数(除く生鮮)の見通しの中央値が前年度比プラス1.1%と前回10月のプラス0.9%から引き上げられた。
展望レポートでは、消費者物価(除く生鮮)の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられるものの、エネルギー価格などの上昇を反映して、小幅のプラスとなっているとあった。
11月の消費者物価指数(除く生鮮)の前年同月比はプラス0.5%となっていた。携帯電話通信料の引き下げの影響を仮に除くとプラス2%近辺となる。ただし、GO TOトラベル事業等の一時的な要因も除くと1.5%近辺となる。 今後は、GO TOトラベル事業等の一時的な影響がなくなり、4月からは携帯電話通信料の引き下げの影響もなくなる。
原油先物価格がこのまま上昇を続けることも予想され、今後はエネルギー価格上昇による押し上げ寄与は増加する可能性もある。しかし、日銀はエネルギー価格上昇による押し上げ寄与は減衰していくと予測している。
家計の値上げ許容度は賃金上昇率の高まりなどを反映して緩やかに改善するともあったが、それを待たずに食料品の値上げがすでに予定されている。一部の運賃値上げもあり、電気料金なども少なくとも2月あたりまで値上がりが続く。
さらに展望レポートで指摘しているように、企業の価格設定スタンスも徐々に積極化することから、コスト転嫁と価格引き上げの動きが拡がっていくことが予想される。
果たして今後の消費者物価指数(除く生鮮)が2%に届くことは考えづらいのであろうか。
FRBは物価上昇について一時的という言葉を声明文から削った。ECBのデギンドス副総裁はユーロ圏の物価上昇は従来予想ほど一時的なものではないと発言している。
日銀が発表している企業物価指数は12月は前年比8.5%と高水準が維持されている。消費者物価の前年比2%というのは、ここにきてむしろ現実味を帯びつつあるようにも思えるのだが。