前年比で大きく増加…2020年のサラリーマンこづかい事情をさぐる
日本の就労者の就業職種のうち少なからぬ割合を占めるサラリーマンにおける生活様式は、それらの人々自身はもちろん、日本の社会全体の状況を推し量る一つの指標となる。新生銀行では毎年1回、このサラリーマン(など)の日常生活に関する調査「サラリーマンのお小遣い調査」(※)を行い、その結果を報告書として発表している。今回はその最新版にあたる、2020年6月に発表した「2020年サラリーマンのお小遣い調査」の結果などを基に、直近、そして近年におけるサラリーマンのこづかい事情を確認する。
直近分も含むここ数年における、回答者年齢階層別のサラリーマンのこづかいの実情は次の通り。
全体としては前年の減少傾向から転じて増加、プラス2672円の3万9419円。報告書では「過去5年で最も高水準であった2018年と同じ水準まで回復」と説明している。もっとも、後ほど示す中長期的なグラフから分かる通り、調査の限りでは2011年以降はほぼ横ばい、いくぶんの減少を維持しており、2020年の前年比での増加も、誤差領域の動きと解釈した方が道理は通る。
金額そのものは50代がもっとも大きく4万1987円、次いで20代の4万1377円、30代が3万7874円、そして40代の3万6449円と続いている。
前年比は次の通り。
前年比ではすべての年齢階層で増加しているが、特に20代と50代の伸び方が大きい。50代は前年においてマイナス5966円、20代はマイナス4470円と大きな減少幅を示していたので、その反動が多分にあるのだろう。
今年だけでなく数年来続いている傾向だが、20代から50代のサラリーマンでは、給与が一番少ないはずの20代ではなく、30代から40代の中年層が一番、こづかいの額面では小さな値を示している。子供がいる世帯が多く、家計内でのやりくり事情が影響していると考えられる。
実際、既婚と未婚で区分すると未婚者の方が平均こづかい額は高い。未婚者全体では4万6741円、既婚で子供無し・共働きでも3万6908円、既婚で子供あり・専業主婦では3万5965円にまで額が減る(グラフ化は略)。同時に付き合いも増え半ば強制的な出費もかさむこの年齢階層には、お財布事情が厳しい時代が継続中のように見える。
余談ではあるが、公開されているデータから、毎年のサラリーマンのこづかい状況の推移と、日経平均株価(年末の値、2020年は6月25日終値)をかぶせると次のようなグラフが完成する。
グラフの形状、さらには過去の報告書でも指摘されていたが、1991年以降のバブル崩壊後においては、サラリーマンのこづかい額は日経平均株価に1年から2年遅行する形で連動する動きを示していた。これはまさに景気対策・政策の実行と、その成果が民間ベースにまで浸透するタイミングと近いもので、興味深い傾向でもある。
もっとも2011年以降は日経平均株価が上昇傾向にあるにもかかわらず、サラリーマンの平均こづかい額はほぼ横ばい、むしろ微減する傾向に。連動性が薄くなったのには、何か理由があるのだろうか。子育ての経費がかさむようになった、サラリーマンの世帯内での社会的立ち位置が弱くなった、例えば携帯電話代のようなこづかいとは別あつかいの別の支出が家計から生じている、色々と理由が考えられる。
なお2020年においては前年と比べて株価は下落し、つまり経済そのものが軟調さの気配を見せていることになる。ところがこづかい額は前年から上昇。増えた理由を報告書などから探ると、「給料が上がったから」以外に「副業を始めたから」「投資などを始めた・儲かったから」が上位を占めている(グラフ化は略)。給料はともかく、副業や投資でこづかいが増えるというのも、複雑な心境を覚える人も少なくあるまい。
■関連記事:
マンガ、外食、異性との付き合い…大学生のこづかいの使い道、昔と今の変化を探る
プレミアムフライデーの導入は全体で4.6%…働き方改革のサラリーマンへの浸透の実情をさぐる
※サラリーマンのお小遣い調査
直近年分となる2020年分は2020年4月10日から14日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2717人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料では多くを占める会社員は男性1252人・女性841人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が40.7対59.3、女性は54.3対45.7。今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけではないことに注意。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。