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【新型コロナワクチンと自己免疫性皮膚疾患の関係】接種後に症状悪化のリスクも

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

新型コロナワクチンと自己免疫性皮膚疾患の関係性

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは世界中に大きな影響を与えました。その対策として開発されたワクチンは、多くの命を救ってきました。しかし一方で、ワクチン接種後に自己免疫性皮膚疾患が新たに発症したり、既存の症状が悪化したりするケースが報告されています。

今回は、ドイツの研究チームによるメタ分析の結果を基に、新型コロナワクチンと自己免疫性皮膚疾患の関係性について解説します。

【新型コロナワクチン接種後に報告された主な自己免疫性皮膚疾患】

メタ分析では、以下の6つの自己免疫性皮膚疾患について調査が行われました。

1. 水疱性類天疱瘡(BP)

2. 尋常性天疱瘡(PV)

3. 全身性エリテマトーデス(SLE)

4. 皮膚筋炎(DM)

5. 扁平苔癬(LP)

6. 白血球破砕性血管炎(LV)

これらの疾患は、免疫システムが自分自身の体を攻撃することによって引き起こされます。ワクチン接種後、新たに発症したり、既存の症状が悪化したりするケースが確認されました。

【ワクチンの種類や接種回数による違い】

メタ分析では、mRNAワクチン(ファイザー社とモデルナ社)とウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ社とヤンセン社)の両方で、自己免疫性皮膚疾患との関連が示唆されました。ただし、mRNAワクチンの方が報告件数は多い傾向にありました。

また、1回目よりも2回目以降の接種後に症状が現れるケースが多いようです。接種からの期間は、疾患によって異なりますが、概ね1~3週間以内に発症するケースが大半でした。

【皮膚疾患以外の自己免疫疾患への影響と今後の課題】

今回のメタ分析では皮膚疾患に焦点が当てられていますが、関節リウマチなど他の自己免疫疾患への影響も懸念されています。ワクチンの成分と体内のタンパク質の類似性(分子相同性)や、自然免疫の過剰な活性化などが関与している可能性があります。

ただし、ワクチン接種のメリットは非常に大きく、発症リスクを上回ると考えられています。特に免疫抑制療法を受けている患者さんにとって、ワクチン接種は重要です。

自己免疫性皮膚疾患を持つ方がワクチン接種を検討する際は、主治医とよく相談し、ベネフィットとリスクを慎重に比較検討することが大切だと思います。

参考文献:

Hinterseher J, et al. Autoimmune skin disorders and SARS-CoV-2 vaccination – a meta-analysis. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft. 2023;21:853–861. https://doi.org/10.1111/ddg.15114

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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