「韓国の砲弾340万発がウクライナを救うか」米有力シンクタンク
韓国で4月10日に行われる総選挙の結果によっては、同国軍が備蓄する数百万発の砲弾が弾薬不足に苦しむウクライナに送られ、ロシアとの戦いに影響を及ぼすことになるかもしれない。
米国有数のシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)は先月22日、ウェブサイトで「韓国の105ミリ砲弾はウクライナを救えるか?」と題したレポートを公開した。レポートは、韓国軍が備蓄する105ミリ砲弾は340万発に及んでおり、これが供給されればウクライナ軍にとって大きな力になる一方、韓国軍はすでに砲兵装備の主力を155ミリ榴弾砲に移行中のため、北朝鮮との対決に備える備蓄には影響を与えないだろうと分析している。
韓国政府はウクライナに殺傷兵器を提供しない原則を持っており、それは現在も堅持されている。
しかし韓国は昨年、ウクライナ支援で砲弾の備蓄を減らした米国の要請に応じ、数十万発の155ミリ砲弾を供給したことが米メディアの報道で明らかになっている。これは実質的に、米国を経由したウクライナ支援だった。
こうした前例があるうえに「韓国国民は広くウクライナに同情している。 2023年7月の尹錫悦大統領のウクライナ訪問は総じて高い評価を受けており、尹政権の支持者らは外交政策が尹氏の好業績の原動力となっていると指摘している。したがって、尹政権は105ミリ砲弾の交換協定を支持する可能性がある」と、レポートは論じている。
だが、現下の韓国の政治情勢を踏まえると、こうした見方はやや楽観的にすぎるかもしれない。
総選挙の投開票を目前に控え、与野党の支持率はきっ抗している。尹大統領が自由主義諸国との結束強化に重きを置いているのは確かだが、最大野党・共に民主党のウクライナ情勢に対する態度は冷ややかだ。同党の李在明(イ・ジェミョン)代表は今回選挙の遊説でも、「ロシアと反目すれば韓半島の安保環境が悪化する」との理由で、ウクライナ支援に反対する姿勢を鮮明にした。
(参考記事:「北朝鮮の砲弾でむしろ壊滅的な結果も」ロシア軍、専門家が予想していた)
尹政権は昨年と同様に米国を経由する方式ならば、議会の同意なしに弾薬供給を実行することが可能だ。しかし総選挙で野党が勝ち、過半数を握った場合、政権は神経質にならざるを得ない。野党が内政を巡る駆け引きで政府の「独断専行」に対抗し、重要政策が停滞すれば、次期大統領選で不利な立場に追い込まれかねないためだ。
逆に与党が選挙で勝利すれば、尹政権は果敢に米国と共同歩調を取り、もし米国が強く求めるならば、弾薬供給に応じる可能性が高い。さらに、ロシアが北朝鮮との軍事協力をいっそう深めるならば、それもまた、韓国がウクライナ支援に積極的になる動機として働く可能性もある。