冬には冬の走り方! グリップしないタイヤをどう温めるか【バイク編】
タイヤに負荷をかけて温める
今週は寒波と天候不順が重なり体にこたえる日が続きましたね。私も厳寒の中、ある雑誌の企画で北関東にあるサーキットで最新モデルの一気乗りテストをしたのですが、とにかく底冷えのする寒さで、メーターの気温表示は昼過ぎで3℃! 凍結の危険を知らせるインジケーターが点灯する中での全開アタックという試練でした(笑)。
そんなときに最も気を遣うのがタイヤです。タイヤはすべて純正装着されている一般公道用で、レースではないのでタイヤウォーマーも使えません。普通にツーリングに行くときのような想定での試乗です。
テストに参加したライダーの中には元WGPライダークラスの方々もいらしたのですが、彼らの走りを見ていると非常に参考になります。コースに出るとタイヤの感触を確かめるようにじっくりとウォームアップを開始。でも只ゆっくりと走るわけではなく、直線ではしっかり加速してリヤタイヤに熱を入れています。コーナー手前でもギュ、ギュっと二度三度ブレーキを強くかけてフロントタイヤを揉むようにして発熱を促していました。ブレーキのタッチとタイヤのグリップ感も同時に確かめているようですが、MotoGPでもグリッドに付く直前などによく見られる光景ですね。公道では極端なことはできないですが、考え方として参考にはなるはずです。
数ミリずつ接地面をずらしていく
タイヤの性能は熱がすべてを決めるといっても過言ではないでしょう。最近のバイク用タイヤは温度依存性が低くなり、ある程度は冷間時からグリップ力を発揮するように進化してきていますが、それでも基本は同じ。タイヤは表面のゴム(コンパウンド)と内部の金属(ベルト)から作られていて、ある程度負荷をかけてやらないとタイヤ内部まで温度が上がりません。
前述のようにストレートで加速・減速を繰り返してタイヤに熱を入れながら、コーナーでは徐々にバンク角を増やしていきますが、やってはいけないのが急な倒し込み。タイヤのセンター部分は温まっていてもショルダーと呼ばれる端の部分は冷えたままなので、スッテーンといってしまいます。徐々にペースアップしつつコーナー毎に少しずつバンク角を増やしながら、数ミリずつ接地面をタイヤの端へとずらしていく感じでしょうか。そうこうするうちに、タイヤだけでなくエンジンやサスペンションなどバイクを構成する部品も温まり、ライダー自身も体が動くようになり人車一体でウォームアップできるわけです。
ABSやトラコンを過信しない
もうひとつ注意したいのがコーナーの入口と出口。つまり、ブレーキングと立ち上がりです。少しタイヤが温まってきてグリップ感が出てくると、ついつい気が急いてペースアップしがちですが、コーナー入口でブレーキを残したまま(ある程度ブレーキをかけたまま)倒し込んでいくと急にフロントからスリップダウンすることがあります。また、コーナー出口でまだバイクが傾いている状態で焦って加速しようとスロットルを開け過ぎると、今度はリヤタイヤがスピンして最悪は転倒してしまうことも。
最近ではABSやトラクションコントロールなどを搭載したモデルも増えましたが、どんな高精度な電子制御でも限界はありますし、実際のところフルバンクに近い状態でのコントロールはほぼ不可能です。
冬には冬の走り方がある
繰り返しになりますが、特に路面温度が低いときほど、慎重にじっくりとウォームアップすることが大事です。そして、本当に寒いときはいくら走り込んでもタイヤ温度は一定以上には上がってくれません。たとえタイヤウォーマーを使ったとしても、走っているうちに冷えた路面に熱を奪われてしまうからです。ましてや信号待ちなどストップ&ゴーが多い公道でタイヤ温度を上げるのは難しいことは想像できると思います。
ということで、どんな高性能なタイヤでも冬場は夏のようには走れません。ビビリすぎるのもよくないですが、冬には冬の走り方があるということです。
今週末も関東北部や甲信越では雪が降る所もありそうなので、クルマやバイクでお出かけを予定している方は十分な注意をお願いいたします。