テレビを見ている人、25年前は92.1%・今は78.7%…数十年にわたるテレビ視聴の変化
モノクロタイプで多くの人の心をとらえ、カラータイプの普及に伴いその心をつかんでそれ無しには生きていけないほどのとりこにしてしまったのがテレビ(放送)。ところが今世紀に入ると類似の新型エンターテインメントツールが多数登場し、選択肢が多様化したことで人々の心はまどわされ、テレビの堅硬な座は脅かされているとの指摘もある。その動向の一端を、NHK放送文化研究所が2021年5月に発表した2020年国民生活時間調査(※)の報告書を基に確認する。
今件ではテレビを見ている人を「テレビ(視聴)行為者」と表現しているが、これは1日15分以上テレビ(据置型テレビの他にワンセグによる視聴も含む。録画視聴や購入・レンタルソフトの視聴は除く)を見ている人を意味する。要は実質的に回答者が「テレビを見ている」と自認できるほどの視聴をしている人のことを指す。
次に示すのは職種別のテレビ視聴行為者率の実情。無職や主婦はテレビ視聴行為者率が高いが、就業者は低めとなる。これは今件データに関して取得可能なもっとも古い値1995年でも、直近となる2020年でも変わりはない。
平日だが、主婦や無職、農林漁業者のような、時間の柔軟性が高い職種は高め、就業者や学生は低めの値が出ている。そして経年では元々低い値だった職種が大きく下落し、時間に余裕がある職種はあまり下げていない。選択肢が多様になった結果、多忙な人が別のメディアを選び、テレビ視聴を選択から除外した・順位が下がったため手をつける機会が減ったことがうかがえる。特に販売職・サービス職や学生の減少度合いが著しい。
休日も平日と状況はあまり変わりない。しかし平日と比べて休日は時間に多少の余裕があるはずで、それでもなお平日に多忙な就業者や学生が相変わらず25年の間に大きな減少を示しており、単に「時間が足りなくて優先順位の低いテレビを見る人が減った」だけでなく、「選択の結果、テレビ視聴を除外した」人が多数に及んでいることが分かる。とりわけ若年層がほとんどを占める学生の減少度合いが注目に値する。
一方、テレビを視聴している人に限定した視聴時間は25年で増加の動きにある。
学生≒若年層のテレビ離れは本格的で、テレビ視聴行為者に限定しても視聴時間を減らしているが、それ以外はおおよそ25年間で大きな変化は無し、むしろ日曜の一部属性では大きな増加の流れにある。とりわけ農林漁業者や自営業者、無職の時間の増加ぶりが著しいが、これはそれらの属性の少なからずを構成する高齢者≒テレビ愛好家が増えたことも一因ではある。要はそれらの職種そのものではなく、その職種の年齢階層別構成比の変化が原因。
もっとも25年前も今も、学生はテレビを見ている人でもさほど長くなく、無職や主婦はテレビ視聴時間が長いことに変わりはない。
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※2020年国民生活時間調査
住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。
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