半世紀近くにわたる学習塾の月謝の変遷をさぐる
40年で約4倍
学校の授業の補完や受験勉強のため、今では多くの子供達が通う学習塾。その月謝はいかなる推移を示しているのか。総務省統計局の「小売物価統計調査」の公開データを基に、その動向を確認していく。
該当項目におけるもっとも古い値は1976年のもの。また2013年4月以降とそれ以前では、
・2013年4月より前……学習塾。月謝。中学生を対象とした塾で2年生。学習内容が補習又は進学。学習科目3科目(英語,数学,国語)。週2回又は3回。
・2013年4月以降……学習塾。月謝。中学2年生。グループ指導。補習又は進学。学習科目5科目(英語、数学、国語、理科、社会)。週2日又は3日。
と大きく様変わりし、それに伴い月謝額も跳ね上がる形となっている。これは学習塾の状況変化に伴い、より一般的な対象を精査対象とするためのもの。学習塾も時代の流れに伴い、そのスタイルを変えている次第。また2016年1月以降は「学習塾」との表現を止め、「補習教育」としているが、内部説明に「学習塾」と追加された以外は変化は無く、同一対象と見なして問題は無い。
ともあれ、次に示すのが学習塾の月謝推移。
やはり対象変更によりイレギュラー的な動きが生じてしまっているが、前世紀まではほぼ右肩上がりに上昇する一方で、今世紀に入ってからは横ばい、むしろ漸減する傾向にある。子供の人数の減退により、学習塾の経営も厳しくなり、差別化・競争激化が生じ、値上げがしにくくなったのだろうか。
なお2016年から2017年にかけて小さからぬ下げ幅が生じているが、これは対象銘柄の選定基準に変更は無いものの、具体的な銘柄そのものが内部的に変更したのが原因と考えられる。具体的にどの塾を対象としているのかは非公開であるため、確証はないのだが。
ともあれ、1976年から基準変更直前の2012年までの間に塾の月謝はほぼ3倍、基準が変わってしまったが直近2017年との間には大よそ4倍もの差が生じている。
消費者物価の動向を考慮すると
続いてこの月謝動向に、消費者物価の変化を反映させて考察する。物価が違えば同じ金額でも価値は変わることから、単純な金額比較で問題が生じる際の対策でもある。
具体的には各年の価格に、それぞれの年の消費者物価指数を反映させた値を試算する。直近2017年の値を基準値として、各年の価格を再計算した結果が次のグラフ。つまりそれぞれの年における物価が2017年と同じ水準との仮定のもとに、各年の具体的な値を換算した結果である。
やや上昇カーブがなだらかになるが、前世紀末までの上昇と、今世紀に入ってからの横ばい傾向に大きな変化はない。これは消費者物価そのものが1970年後半以降はあまり大きな動きを示さなかったのが原因である。むしろなかばデフレ的な状態を示す期間もあったほど。月謝を払う立場からすればありがたい話ではあるが、その月謝を資本に給与を受け取る講師の立場からすれば、頭の痛い話には違いない。
ちなみに中長期的推移を取得できないため今回精査からは除外したが、直近月における小学生の学習塾と高校生向けの予備校の授業料は次の通り。
予備校の授業料が一番高く、月額換算で5万円超。小学生は3万5000円程度。中学生向けの学習塾が一番安値となっている。とはいえ、年次で換算すれば単純計算でこの12倍。家計にとって小さからぬ負担には違いない。
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