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Uber、インド市場に10億ドル投資:求められているタクシー会社としての「信用とイメージの回復」

佐藤仁学術研究員・著述家

世界最大の配車アプリ企業Uberがインド市場において今後9か月間で10億ドルを投資すると報じられた。Uberは2013年にインドのバンガロールでサービスを開始してから、現在インド18都市でサービスを提供している。スマートフォンのアプリで車を手配(配車)できるサービスである。

インドでは現在Uberは1日に20万回乗車されているが、10億ドル投資することによって、1日の乗車数を100万回までに拡大していきたい。また2016年までにはドライバーを中心に20万人の雇用を創出していくとのことである。

インドにはソフトバンクが2014年10月に2億1,000万ドル出資した同業他社のOlaがある。そのOlaはUberが10億ドル投資することに対抗して、5億ドル調達に向けて動いていると報じられている。

インドには既存のタクシー会社もあり、さらに配車アプリによる自動車(タクシー)手配の台頭で、タクシー市場は非常に競争が激しくなってきている。

■喫緊の課題はデリーでのUberドライバーのよる女性暴行事件からの「信用とイメージの回復」

今回、Uberは競争が激しいインド市場に10億ドル投資して、サービスの拡大と利用者増加を図ろうとしている。しかし、現在のインドのUberにおいて一番求められているのは同社の「信用とイメージの回復」である。

2014年12月にUberのドライバーがデリーで25歳の女性を暴行して、ドライバーが逮捕され、デリー市内での営業禁止処分を命じられた。インドでは女性への暴行事件には非常にセンシティブである。特に2012年に起きたバスでの集団暴行事件をインド人はまだ忘れていない。Uberも交通機関での暴行事件であり、Uberに対しても市民らが抗議活動を行い、その様子はインド全国だけでなく世界中で報じられた。デリーでのUberドライバーによる暴行事件もインド人にとってはまだ記憶に新しい。

■Uberはタクシー会社

Uberは自社をIT企業と称しているが、インドだけでなく世界中の多くの人にとって、Uberは「タクシー会社、運送業」である。安心して乗車できないのであれば、誰も利用したいとは思わない。これからUberはインド市場に10億ドル投資して事業を拡大していくようだが、まずはインド市場において「Uberは誰もが、いつでも安心して乗車できるタクシー会社である」という信用とイメージの回復がなによりも重要である。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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