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話題豊富だった2021年ゴルフ界、締め括りは今年も「ハッピー・バースデー、タイガー!」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 日本の日付はすでに31日に変わっているが、アメリカはまだ30日。世界のゴルフ界から次々にこのフレーズが聞こえてくる。

「ハッピー・バースデー、タイガー!」

 そう、12月30日はタイガー・ウッズの誕生日。それゆえ、ウッズがプロデビューした1996年以来、毎年、1年の締め括りはウッズだった。

 今年2月の交通事故で命さえ危ぶまれたウッズが、果たして46歳の誕生日を祝うことはできるのか、どんな表情で迎えることになるのかは、この10か月ほどの間、常にファンや周囲の懸案であり、心配であり、不安でもあった。

 だが、ウッズは笑顔をたたえながら、子どもたちと静かに、そして幸せに、バースデー・ケーキを囲み、キャンドルを吹き消し、楽しいパーティーを味わっているのではないだろうか。

【話題豊富な1年だったが、、、】

 振り返れば、2021年は実に話題が多い1年だった。

 メジャー4大会では、マスターズで松山英樹が優勝し、全米プロではフィル・ミケルソンがメジャー大会史上最年長の50 歳にして勝利を飾った。

 全米オープンではスペインのジョン・ラームが、全英オープンでは日系人のコリン・モリカワが、いずれもメジャー初優勝を遂げた。

 今年のメジャー勝者がアメリカ人のみではなく、日本人や日系人、スペイン人が加わったことは、ゴルフが世界各国へ広まり、グローバル化が進んでいる何よりの証だ。

 それと同時に、若きモリカワから大ベテランのミケルソンまでとメジャー勝者の年齢や世代に幅ができ、米ゴルフ界の層の厚さがこれまで以上に増していることもわかる。そう、世界におけるゴルフは「広く深く」なりつつある。

 その一方で、PGAツアーに対抗する新ツアーとして、サウジ・マネーをバックにつけたSGL(スーパー・ゴルフ・リーグ)が立ち上げられると見られており、「2022年の春からキックオフ」とも言われている。

 新ツアーが本当に稼働できるのかどうか、欧米両ツアーのどの選手がSGLに移るのか等々は、今のところは未定であり、不明でもある。だが、PGAツアーは選手たちがSGLへと流出してしまわないよう、2022年はさまざまな大会の賞金を大幅にアップさせ、さまざまな新ボーナス制度も創設するなどして、「マネー」による足止め作戦を敢行中だ。

 SGLの背後にはサウジ政府とサウジ・マネーが付いているが、PGAツアーは欧州ツアーと戦略的提携を結んだことで欧州ツアーと関係が深いドバイ・マネーを味方に付け、これで「サウジ・マネーVSドバイ・マネー」のライバル関係と構図が出来上がった。

 こうして振り返ってみると、2021年がいかに話題が多い1年だったが、あらためてわかる。

 しかし、1年の締め括りは、やっぱりウッズになった。あの交通事故後、ほぼ3か月間をベッド上で過ごしたウッズだが、右足切断も検討されたぎりぎりのどん底から、わずか10か月で這い上がり、12月半ばに開催されたPNCチャンピオンシップに12歳の長男チャーリーくんと出場。ウッズ父子は最終日には一時は首位に並び、優勝にさえ手を伸ばした。

 それは、ゴルファーとして、父親として、人間として、再起と復活を目指したウッズの執念の賜物であり、文字通りの「奇跡の回復」「奇跡の試合復帰」だった。

 ウッズがPGAツアーにデビューしてから、すでに四半世紀以上の歳月が流れたが、いまなお暦の上の1年がウッズで始まりウッズで終わる現象は、米ゴルフ界のみならず世界中で続いている。

 四半世紀、いや世紀の逸材ウッズが今、46歳の誕生日を笑顔で迎えていることを世界中が喜び、安堵している。今年も1年の締め括りがウッズであってくれて良かった。

「ハッピー・バースデー、タイガー!」

 私も大きな声でウッズに「おめでとう」を言いたい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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