一人暮らしの若者のお金の使い道の変化を探る
時代と共に社会環境や風習、消費性向、物価は大きく変化し、それと共に生活に必要となるお金の方向性、額面も変化していく。特にやりくりが大変な、一人暮らしの若者達のお金の使い道はどのような変化を遂げているのだろうか。総務省統計局は2015年9月に発表した、全国消費実態調査の結果から探りを入れていく。
今回精査するのは、一人暮らしの勤労者世帯のうち30歳未満が対象。その世帯を対象に、一か月の消費支出(税金や社会保険料をのぞいた「世帯を維持していくために必要な支出」)が具体的にどのような項目に割り振られているのかを示したもの。取得可能な公開値は1969年以降のものであることから、それ以降のものをすべて用いる。また個々の額が少額のため、「その他消費支出」独自の項目以外に「光熱・水道」「家具・家事用品」「保険医療」「教育」もまとめて「その他消費支出」に合算している。
まずは全般的な傾向について。昔から今に至るに連れて「食料」が減り「住居」が増えている。いわゆる「エンゲル係数」が減少し、その観点では生活にゆとりが生じているのが確認できる。食品価格の安定、下落、支出の多様化の他に、男性においては外食費の切り詰めが原因。もっとも男性に限れば、直近2014年ではわずかながらも増加している。
「交通・通信」の増加は公共機関やガソリン代の値上げの他、携帯電話の使用によるところが少なくない。ただし男性は今世紀に入ってから比率が漸減しており、切り詰めの対象としていることが分かる。
一方、「住居」の割合が大きく増加しているのも確認できる。一般に「家賃は収入の2割から3割が家計のバランス的に優れている」とされている。今グラフの割合は「消費支出」であり、「収入」ではない(収入は今件消費支出以外に、税金などの非消費支出や貯蓄などにも割り振られる)ことを合わせて考えると、実際の対収入比率はもう少し下がるが、負担が大きくなりつつあることに変わりはない。
また、女性に比べて男性の方が「食料」の割合が大きく、また経年による減少率も大きい(直近ではわずかながらも増加しているが)。これは単身若年男性は、例えば職場での昼食のように外食に頼る面が多く、同時に切り詰めの対象として筆頭に挙げられているからに他ならない。
女性は直近の2014年において、前回調査の2009年と比べ、住居が大きく減り、交通・通信が大きな上昇を示している。交通通信部分の詳細を確認すると、自動車などの関係費に加え通信、移動電話通信(携帯電話)の料金が、交通・通信全体を底上げしている。
自動車の利用者の増加、携帯電話の負担増加(多分に利用率のアップに加え、利用者の単価が上昇)が交通・通信の金額、そして比率を引き上げている。また住居だが金額を調べると、2009年時点では5万4177円だったものが、2014年では4万2151円にまで落ちている。大よそ交通・通信費用の増加で、住居費用がしわ寄せを受けた(品質を落とす形で対応した)ものと見受けられる。
元々女性はセキュリティなどに気を使う必要があるため、どうしても家賃そのものが高い傾向となる。そして男性よりも実収入は低いため、結果として消費支出における住居費の割合が高いものなってしまう。そのような実情の中で、女性の住居費比率が減り、男性とさほど変わらない状況となりつつあるのは、憂慮すべき動きといえる。
なお2014年では男女とも、消費支出の1/4以上が住居費で占められる結果となった。家賃などは半ば固定費でもあり、節約することは難しく、他の消費項目と比べても家計に対するプレッシャーは大きい。税金や保険と同じようなものとの認識もあながち間違っていない。お財布事情の厳しさは察するに余りあるといえよう。
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