金正恩「精鋭部隊」で相次ぐ犠牲…ミサイル発射の裏で
過去に行われた北朝鮮の軍事パレードで登場した、放射性物質を示すマークが付いたリュックサックを持って行進する兵士たち。米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、これは朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の各軍団の下に立ち上げられた「核リュック部隊」だ。
各軍団の偵察小隊と軽歩兵旅団の優秀な人員からなるとされており、金正恩時代になって登場した精鋭部隊と言える。
そんなエリート部隊の一つ、平安北道(ピョンアンブクト)の東林(トンリム)に駐屯する第8軍団125軽歩旅団で、信じられないような事故が相次いでいると、デイリーNK内部情報筋が伝えた。昔からの人命軽視が、依然として続いている。
(参考記事:【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮 、ICBM発射で死亡事故か…米メディア報道)
事故の経緯は次のとおりだ。
朝鮮人民軍は毎年12月から冬季訓練に突入するが、その3週目の訓練計画に基づき、特定の一般部隊や民間施設に侵入し、ステッカーを貼ってくるという「双方訓練」を行っていた。その中には、凍った地面に穴を掘って長時間ビバークするというものも含まれていた。
7人ないし10人からなる1つの組は、目標物の半径2キロ圏内に穴を掘り、2日間潜伏するのだが、部下に命令を下した第2大隊所属の組長は、入隊して1年余りのパクという名の19歳の兵士を一人残し、民間人の村に降りていってしまった。自分ひとり、ぬくぬくと夜を過ごすためだ。
詳しい状況は伝わっていないものの、おそらく経験不足のパクはビバーク術を習得していなかったのだろう。翌朝になって変わり果てた姿となって発見された。
この125軽歩旅団では、冬季訓練期間中に事件、事故が相次ぎ、情報筋によると、1回の訓練で2〜3人が死亡し、凍傷にかかって手足の切断を迫られる兵士も少なくないとのことだ。亡くなった兵士の遺族にはまともな補償はなされず、手足を切断して除隊して栄誉軍人(傷痍軍人)になれば、人生を棒に振ることになる。
北朝鮮は5日、新年早々から極超音速ミサイルを試射した。朝鮮中央通信は6日付の報道で「ミサイルは発射後、分離して極超音速滑空飛行戦闘部の飛行区間で初期発射方位角から目標方位角へ120キロメートルを側面機動して700キロメートルに設定された標的を誤差なく命中した」として、成果を誇示した。
しかし経済難の深刻化により国力が衰退する中、その影響は国防の現場にも及んでいると見るべきだろう。
ちなみにこの125軽歩旅団では、朝鮮人民軍では厳しく禁じられている義兄弟の契りを結んだとして20代兵士4人が逮捕され、2人が取調べ中に死亡する事件が起きている。