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工作芸人・できたくんを生んだ古坂大魔王の言葉

中西正男芸能記者
工作をネタに取り入れるスタイルを確立したできたくん

 紙コップなど身近な材料を使った“工作芸”で注目を集める芸人・できたくん(38)。教材「こどもちゃれんじぽけっと」の工作ページで子供たちにはおなじみの存在にもなっていますが、7月6日には工作本「できたくんのできできできた~」(主婦と生活社、1404円)も発売されます。全国各地でライブやワークショップを行い、まさに引っ張りだこの状態ですが、工作芸の道を歩み始めた裏には、名プロデューサーからの助言があったといいます。

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小道具づくりから

 もともとお笑いが大好きで、大学生の時に友達と漫才コンビを組んで事務所に入ったんです。20歳の時でした。そこから漫才をベースにやってたんですけど、なかなか仕事がなくて。

 ただ、僕は地元の大学(群馬大学)で美術の勉強をしていて、美術の教員免許も持っていると。その話を聞いた先輩方から「ライブで使う小道具を作ってくれないか」と言われるようになりまして。「バナナマン」さんとかピコ太郎さんのプロデューサーである古坂大魔王さんとかからお話をいただいて、その度に注文通りに小道具を作っていたんです。そんなことが続いていって、お笑いのスキルはなかなか上がらないけど、小道具づくりのスキルばっかり上がっていきまして(笑)。

工作を芸に

 でも、せっかくできた流れだし、なんとかこれを芸に、仕事にできないかと考えたんです。2004年にコンビを解散したことをきっかけに、05年からは高橋工房という芸名に変えまして「オリジナルの発明品を発表する」という形でネタを構成して工作と笑いを組み合わせるスタイルをとっていきました。

 そんな思いをしっかりと具現化するというか、前に進める後押しをしてくださったのが古坂さんだったんです。毎年、大晦日から年越しを一緒に過ごしているくらい、本当に親しくさせてもらってまして、もう15年以上前になりますかね。出会った頃からずっとおっしゃっていたのが「漫才とかコントとかの行列に並んでちゃダメだ。オレは横から行って、大外からごぼう抜きしてやる。人がやっていないことをやったら、自ずと1位になるんだから」ということ。その考え方を本当にいつも聞いていたので、自分にしかできないことはなんだろう。そこを見つけないとという意識はずっとあったし、それが工作だと頭の中で結びついたのも、古坂さんの言葉をいつも聞いていたからだと思います。

 2012年まで高橋工房としてやって、そこから発泡スチロールを電熱カッターで切って似顔絵を作るという芸をやり始めて、発泡スチロールだけに芸名をハッポゥくんにしたんです。さらに、発泡スチロール以外にも紙コップだとか新聞紙だとか普通に家にあるものを使った工作ネタもいろいろやるようになって、子どもたちがワークショップなんかでうれしそうに言う言葉「できた!」をそのまま名前にしてしまおうと。そんな経緯で、今年5月からはできたくんになりました。名前はその都度変わってきたんですけど、工作で人を楽しませるというコンセプトはずっと変わらずにやってきました。

小道具と曲の物々交換

 今回出した本にDVDがついていて、その中で使っている音楽は古坂さんが作ってくださったものです。というのも、以前から古坂さんがライブで使われる小道具をずっと作らせてもらってたんですけど、最初に小坂さんから「ギャラはいくらがいい?」って聞かた時に「ギャラは要らないので、古坂さんに曲を作ってほしいです」と答えていて。もちろん、それはピコ太郎が登場するずっと前の話なんですけど、こちらが小道具を作ったら、1曲もらって、また作ったら曲をもらうということをやってきたんです。今回のDVDの曲もそんな流れでもらったものだったんですけど、もらった直後にピコ太郎がドカンときまして。これまでもずっとやってきた小道具と曲の物々交換だったんですけど、曲の値打ちが急騰して、なんともラッキーなことでもありました(笑)。もちろん、古坂さんとしたら、計算ずくで当然の結果だとは思いますけど。

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作る喜びを子供たちに

 今後、いつかは、NHKで工作の番組をやりたいなと思っています。ノッポさんみたいに、子どもたちをワクワクさせる工作ができたらこの上なく幸せですね。今の子供はなかなか自分で作るということをしなくなっている。ただ、やっぱり僕も日々自分のライブやワークショップで見てますけど、物を作っている時の子供たちは本当に楽しそうなんです。帽子とかを工作で作ったら、みんなそれを早速かぶって帰っていく。実にうれしそうに。そんな喜びを一人でも多くの子供に味わってもらいたいですね。

 教育学部に行って、実際に美術の教員免許も取ったけど、それを使わずに芸人になった。そして今、もしかしたら学校の先生になるよりも子供たちと数多く接する仕事をするようになった。不思議なものですけど、そうなると、自分がやってきたことが繋がっているというか、無駄でもないし、間違いでもなかったのかなと思えもします。

 ただ、ま、当初の自分の思いとしては「しゃべくりだけで勝負する芸人」になっているはずだったんですけどね。こんな眼鏡をかけて、こんなに両手をフル稼働させるスタイルになってるとは、18年前の自分が見たら、ひっくり返って驚くでしょうけどね(笑)。

(撮影・中西正男)

■できたくん

1980年4月13日生まれ。群馬県出身。本名・高橋和之。群馬大学在学中の2000年にお笑いコンビ「Aランチ」を結成。04年からピン芸人「高橋工房」として活動を開始。12年に「ハッポゥくん」に改名。発泡スチロール板をカットして即興で似顔絵などを作る発泡スチロール芸が話題になる。また、7月6日には工作本「できたくんのできできできた~」(主婦と生活社、1404円)も発売される。著書の発売を記念して、できたくんが全国どこでも無料でパフォーマンスとワークショップに訪れるキャンペーンを開催。問い合わせはdekitakun@kdashstage.jpまで。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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