ファーウェイ、日本でもPC事業に参入:世界的に縮小しているPC市場でスマホのノウハウは活かせるのか
華為技術日本株式会社(ファーウェイ・ジャパン)はスマホメーカーのノウハウを活かした、新しいビジネスを生み出すスタイリッシュで軽量 な2in1デバイス『HUAWEI MateBook』を日本で2016年7月15日から販売する。7月4日には報道陣を集めての発表会を行った。ファーウェイが日本でPC市場に参入するということで多くの報道陣が集まっていた。
ファーウェイ初の2in1デバイス:タブレットでなくノートPC
市場想定売価69,800円でCPUタイプやメモリー、ストレージの異なる3つのモデ ルに加え、法人向けにマイクロソフトWindows 10 Pro搭載モデル。2in1デバイス及びWindows製品の投入はファーウェイでは初めての試み。2in1デバイスというのはタブレットとノートPCの2つが1つになっているということ。『HUAWEI MateBook』はタブレットなのかノートPCなのかと思ってファーウェイ担当者に確認してみたところノートPCの位置づけとのことだ。但し、外付けのキーボードは別売り(14,800円)だから端末のみではWindowsタブレットのままだ。
2in1デバイス『HUAWEI MateBook』は2016年2月にバルセロナで開催されていた「モバイル・ワールド・コングレス(MWC) 2016」において、ビジネスユーザーをターゲットにしたデバイスとして発表された。
全世界で年間1億台のスマホを出荷するファーウェイ
今回、ファーウェイがPC市場参入について強調していたのが「スマホメーカーとしてのノウハウを活かして」ということだった。日本ではまだ存在感が大きくないファーウェイのスマホだが、世界での出荷で見るとサムスン、Appleに次いで3位のメーカーだ。2015年には同社のスマホ出荷台数は、前年度比44%増の1 億800万台で、現在でも1か月に1,000万台出荷されている。ノキア、Apple、サムスンに次いで1億台の出荷を超えた4社目の企業となった。中国やアジア以外でも欧州や中東、中南米市場での人気が高い。特にブランド認知度はヨーロッパで大幅に伸びている。
2015年通年での世界のスマホ出荷台数は前年比10.1%増の14億3,290万台。たしかにファーウェイのスマホの台頭は著しい。それでも世界1位のサムスンは3億台以上、2位のAppleは2億台以上のスマートフォンを出荷しており、ファーウェイよりも3倍、2倍以上の出荷であり、まだまだ上位2社の背中は遠くにある。また中国国内にはLenovoやXiaomiといったライバルが存在しており、Lenovoはグローバル市場でも勢いがある。さらに最近ではインドやインドネシアなど新興国でも地場のスマホメーカーが台頭してきており、ファーウェイは上位2社を「追う立場」でもありながら、新興企業から「追われる立場」でもある。
世界的にも縮小しているPC市場
全世界で14億台以上販売されているスマホと違ってPC市場は世界規模で縮小している。調査会社IDCによると、2015年通年の出荷台数は前年比10.4%減の2億7,622万台だった。2ケタ減少で、PCの出荷が全世界で3億台に届かなかったのは、2008年以来初めてだった。
出荷減の主な原因はPCの寿命長期化とタブレットやハイブリッド端末との競合とされている。ハイブリッド端末とはキーボードを脱着できるタブレットタイプの端末なので、今回のファーウェイの『HUAWEI MateBook』もハイブリッド端末の範疇に入るだろう。
ファーウェイは中国メーカーだが、中国のPCメーカーといったら、圧倒的な世界1のシェアを誇るLenovoで市場シェア20.7%で年間5,718万台出荷している。次いでHP(米国、シェア19.4%)、Dell(米国、14.1%)、Apple(米国、7.5%)、Acer(台湾、7.1%)と続いている。
なおLenovoはスマホでも世界4位の出荷シェア(2015年には約7,400万台出荷)でファーウェイのスマホ出荷に近づいてきている。
日本でも縮小しているPC市場
「日本のパソコン市場に新たな風を吹かせたい」とファーウェイのコリン・コン氏は語っていた。日本のPC市場を見ても世界市場と同様にPC市場は縮小している。2015年末には「パソコン3社が事業統合 東芝・富士通・VAIO交渉へ」という記事が日本経済新聞の1面で報じられ、業界再編が行われるかと思ったが、実際には統合されていない。
IDCが2016年2月に発表した2015年の国内クライアントPC市場実績値(法人市場、個人市場の両方を含む)を発表によると、日本国内でのPC出荷台数は、前年比31.4%減の1,055万台だった。2015年の日本国内のパソコン市場は、出荷台数が前年よりも3割以上減少と大きく落ち込んだ。そして、家庭市場が前年比25.2%減の449万台、ビジネス市場が同比35.5%減の606万台と両市場とも大きく減少している。
そしてその年間1,055万台の小さなパイに、NECレノボ、東芝、富士通、VAIOといった日本メーカー以外にもApple、HP、Dell、Acer、ASUSなどの海外メーカーも多く参入している。そしてついにファーウェイも入ってきた。なお既に日立は2007年に、シャープは2010年に、三菱電機は2012年3月にPC市場から撤退している。
今後、日本のPC市場が急速に拡大するとは考えにくい。またファーウェイは世界的にはサッカー選手メッシを広告に起用してブランド力もあるが、日本ではまだ一般市民にまではファーウェイの名前は浸透していない。発表会には菊川怜さんが登場したが、今後菊川さんを柱にして広告宣伝やブランド構築を行う予定はないようで、ただ発表会に来てくれただけのようだ。
「スマホメーカーとしてのノウハウを活かしてPC市場に参入」を高らかにうたっているが、日本ではファーウェイのスマホを利用したことがある人も多くはない。ファーウェイにとってはまずは日本市場ではブランド力の浸透からだろう。