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「虎に翼」で話題、尊属殺人事件の背景 ドラマで描かれたこと、描かれなかったこと #専門家のまとめ

小川たまかライター
(写真:イメージマート)

 よねさんの4分にわたる弁論が見る人の胸を打った連続テレビ小説「虎に翼」。長年性虐待を受け続けた娘が父を殺してしまうというシビアなテーマが朝ドラで扱われたことに驚きました。これが実際にあった事件・裁判であることは、よく知られています。

 この裁判について触れている記事を読むと、より理解が深まります。

ココがポイント

検察は「彼女はなぜ長年逃げなかったか。父と娘が夫婦然と仲良く平穏に生活していたのだ」と立証しようとした。
出典:サイゾーウーマン 2019/4/9(火)

判決後、まず、大貫弁護士はAとの関係を断った。Aは大貫弁護士を慕い毎年年賀状を送っていたが、こういって止めさせた。
出典:プレジデントオンライン 2024/9/20(金)

「進んでいく中で、5〜6割は勝てるんじゃないかという思いがありましたけど、それでもやはり不安でしたよね。(略)」
出典:弁護士ドットコムタイムズ 2021/3/12(金)

エキスパートの補足・見解

 ドラマでは割愛されていますが、高裁(控訴審)の裁判官は法廷で「父親と夫婦同然の生活をして、父親が働き盛りの年齢を過ぎた頃若い男と一緒になる。(それは)父親を弄んだことになると考えたことは?」と質問したり、「(2人の関係は)大昔なら当たり前」といった同情的な声もあったそうです(上記のサイゾーウーマンの記事に初出とともに詳細に書かれています)。

 当事者である美位子や、彼女を支えるよねさんの立場でドラマを見ていると、尊属殺人の重罰規定がなくて当たり前だと思えますが、当時としては高い高いハードルであり、また、性虐待の被害者に対しての無理解もうかがえます。

 2019年、19歳の女性が実父からの性虐待を訴えた際に、これが無罪になるという衝撃的な判決がありました。これは大きく報道され、世論を喚起し、2023年の刑法性犯罪規定の改正に影響を与えたと言われます。

 つらい思いをした当事者やその支援者がいるからこそ、変わってきたものがあるということを、今期の朝ドラから改めて感じました。

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

トナカイさんへ伝える話

税込550円/月初月無料投稿頻度:月4回程度(不定期)

これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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