米主要株価指数が最高値更新、日経平均も24000円台回復、株価は景気よりもリスクを映す鏡となったのか
米中貿易協議の第1段階の合意文書について、中国の劉鶴副首相が渡米し、15日にも署名すると中国商務省の報道官が発表した。中東情勢を巡る懸念の後退に加え、米中の貿易協議の進展期待も加わり、9日の米国株式市場では、主要3指数が過去最高値を更新した。13日もトランプ政権が中国に対する為替操作国の認定を解除するとの報道など好感し、ナスダックとS&P500種は過去最高値を更新。14日のドル円は110円台を回復したこともあり、日経平均も24000円台を回復した。
経済実態と株価が乖離していることは確かである。株価が最高値を更新するほど景気が過熱しているようなことはない。この株価の押し上げ要因としては、日米欧の中央銀行による過剰な金融緩和策による、いわゆる過剰流動性相場が継続し、買われやすい状況が続いているためといえる。
本来株価は企業の収益動向などを通じて景気実体を反映する鏡となるはずである。たしかに景気そのものは落ち込んではいない。しかし、低空飛行の状態にある。個別はさておき、全体でみれば企業収益が株価の水準に見合うほど改善しているようにはみえない。
現実の株価は下がりづらい状況のあるなか、米中の貿易摩擦、英国のEU離脱、さらには中東情勢といったリスク要因のリスク度の変化に応じて動いていると見ざるを得ない。だからこそ米中の貿易摩擦と中東情勢の緊迫化というふたつの大きなリスクが後退したことによって、米国や日本の株式市場は買い進まれたといえる。
株価は企業収益や経済実態だけで動くものでもないことも確かである。また、ドル円なども米雇用統計などの経済指標だけで動くわけでもない。これは国債の利回りも同様である。日本を含め国債利回りは中央銀行の金融政策によって経済実体以上に抑え込まれている。こちらも財政状態を映す鏡の役割は放棄してしまった格好となっている。
ここにきて日米欧の中央銀行による金融緩和策も限界に近いとの認識も強め、外為市場や国債市場も株式市場と同様にリスクによって動きやすくなってきた。これは8日に一時急落した東京株式市場などをみればその様子が窺える。
金融市場はその時々で動くテーマのようなものがあることも確かである。そのテーマは現状は世界を取り巻くリスクということになっているのであろうか。ただし、このテーマは絶対的なものでなく、どちらかといえば移ろいやすいものでもある。それが変化してきた際には、あらたな注意も必要になる。