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北朝鮮が発射したミサイルは大陸間弾道ミサイル(ICBM)か!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
4月15日の軍事パレードに登場した北のICBM

北朝鮮は14日午前5時27分頃、北西部の平安北道・亀城付近から弾道ミサイル1発を発射した。

韓国の合同参謀本部はミサイルの飛行距離は「700キロを超える」と発表したが、日本政府は「約30分間飛行し、約800キロ飛び、日本海に落下した」(菅義偉官房長官)との分析を明らかにした。最高高度は「2000キロを越える」(稲田明美防衛相)と推定していた。

北朝鮮がどのような種類のミサイルを発射したのか、どのような実験を行ったのか、詳細なことは何一つわかってない。

北朝鮮は3月22日、4月5日、4月16日、4月29日と弾道ミサイルを発射し、4回とも失敗している。米政府関係者は失敗したミサイルは中距離弾道ミサイル「KN-17」と推定していた。

(参考資料:北朝鮮のミサイル失敗は意図的か、米軍のサイバー攻撃によるものか!?

「KN-17」は液体燃料を使う1段式の新型対艦ミサイル(ASBM)である。4度目の4月29日の発射は日本海に面した咸鏡北道・新浦からではなく、西部の平安南道・北倉から北東に向けて発射されていた。陸を横断するので相当な自信がなければ発射できないが、数分で爆発し、最高高度は71キロしかなかったと伝えられた。仮に今回も「KN-17」が発射されているならば、成功したことで米艦船にとっては大きな脅威となるのは言うまでもない。

北朝鮮は今年に入って今回の発射を含め7回ミサイルを発射しているが、平壌から100km離れた亀城からは2月12日に潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の地上発射型「北極星2型」が発射されたばかりだ。「北極星2型」は約500キロ飛行し、高度は約550キロと推定されていた。仮に、今回のミサイルが「北極星2型」ならば、2000キロ以上上昇し、発射地点から800kmの地点に落下したことで性能を一段と向上させたことになる。

(参考資料:「北極星2型」の発射はICBM発射の前触れか!

今回の発射が成功ならば、北朝鮮は明日にも大々的に発表するだろう。その際にどのような実験を行ったのか明らかになるが、もしかすると、「ICBMの発射に成功した」との電撃発表もあるかもしれない。

ミサイルは日本の排他的経済水域(EZZ)手前の日本海に落下したが、30分も飛行しながら、飛距離が800kmにとどまったのは、高角度で高高度まで打ち上げる「ロフテッド方式」による発射だったからである。仮に、直角でなく、正常な角度から発射され、燃料を満タンにすれば、飛距離は5000~6000キロは軽く出たかもしれない。

亀城からのミサイルの発射は昨年10月15日が初めてだった。亀城からはそれまでは一度もなかった。この時のミサイルは発射直後に爆発し、グアムを標的にした中距離弾道ミサイル「ムスダン」と報道されていた。

「ムスダン」は昨年4月15日に初めて試射され、3回失敗を繰り返し、6月22日に4回目にして、計6発目で成功している。高角発射で最高1、413キロメートルまで上昇し、発射地点から400キロメートルまで飛行したことで北朝鮮も「成功した」と報じ、金正恩委員長も満面に笑みを浮かべ、大喜びしていた。これで「ムスダン」の実験は終了かと思いきや、4か月後に再発射された。不思議なのはそれまでの「ムスダン」の発射場はいずれも日本海に面した江原道の元山付近からであった。それが、場所を変え、亀城から発射され、結果は爆発して、失敗に終わっている。

こうしたことから昨年10月の亀城からのミサイルは「ムスダン」ではなく、長距離弾道ミサイルではないかとの疑問を提示した人物がいる。ジェフリー・ルイス非拡散センター東アジア担当局長で、当時発射場となったパンヒョン飛行場を撮影した商業用衛星写真を分析した結果、試験場に残されていた焼け跡が「ムスダン」のそれよりもはるかに大きかったことから長距離弾道ミサイル「KN-08」の可能性をワシントンポスト紙(2016年10月26日付)で指摘していた。

金正恩委員長は昨年4月、ICBM用大出力エンジン地上噴出実験に成功するや「新たな大陸間弾道ロケットにより強力な核弾頭を装着して核攻撃を加える確固とした担保を手にした」と公言し、さらに今年の新年辞では「大陸間弾道ロケット(ミサイル)試験発射準備が最終段階に達した」と発言していた。そして、今年3月19日には北朝鮮は高出力エンジンの燃焼実験に成功していた。金委員長は燃焼実験を高く評価した上で、「今日成し遂げた巨大な勝利がどのような意義を持つか、世界が目の当たりにすることになる」と述べICBMの発射実験の時期が迫っていることを示唆していた。

米太平洋司令部は今回の北朝鮮のミサイルを探知、追跡した結果、「飛行軌道がICBMと一致してないことからICBMとはみられない」との見方を示したが、仮に、北朝鮮が「ICBMの試射に成功した」と発表するようなことになれば、米国のレッドラインをあっさり越えたことになる。そうなれば、「そうはさせない」と公言していたトランプ政権の面目は丸つぶれ、威信低下は避けられない。

ICBMであれ、何であれ、弾道ミサイルの性能向上は米国の安全保障にとって死活的な脅威になるだけにトランプ政権の対応が注目される。

(参考資料:米朝軍事衝突は避けられないか!

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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