日銀の金融政策の先行きは物価次第なのか
日本銀行の黒田東彦総裁は15日、前日実施した固定利回りで無制限に国債を買い入れる指し値オペについて、日本の金利が海外金利の上昇などに過度に影響されたと判断したとし、長期金利が予想通り低下して「適切な効果を持った」と述べた。衆院財務金融委員会で野田佳彦氏(立憲民主)の質問に答えた(15日付ブルームバーグ)。
この記事によると、他の発言として「現在の世界経済と金融、大きな波を迎えている」、「具体的な出口議論、2%近づいてやらないとミスリード」、「出口・正常化ではバランスシートと政策金利引き上げを議論」というものがあった。
以前、黒田総裁は「物価については、資源価格の一時的な上昇によって物価が上昇しても、それに対応して金融を引き締めることは全く考えていない」とも発言していた。その発言に比べると、今回の発言はやや柔軟化してきたかにみえなくもない。
出口・正常化ではバランスシートと政策金利引き上げを議論とあったが、それ以前に長期金利コントロールの解除が必要になってくると思われる。
このあたりの議論は、少なくとも物価が2%にならないと始められないということであれば、日銀が目標に掲げる消費者物価指数(除く生鮮食料品)が2%をまず超えてくるのかどうかが注目点となる。
18日に1月の全国消費者物価指数が発表される。すでに発表された東京都区部の1月分の消費者物価指数(除く生鮮食料品)は、前年同月比0.2%の上昇となり、昨年12月の同0.5%が伸びが低下した。これはGO TOトラベルの反動分がなくなったことが影響していた。
しかし、この数値には携帯電話料金の引き下げによる影響が加わっている。それが1.1%程度ある。それを除くと1.6%あたりとなる。
18日に発表される全国分についても前年比の上昇幅は縮小されるとみられ、東京都区部と同様に0.2%あたりが予想される。12月の全国消費者物価指数でみると携帯電話料金の引き下げによる寄与度は1.48となっていた。このまま当てはめると携帯電話料金の引き下げによる影響を除くと1.7%近辺となる。今年4月分からはこの携帯電話料金の引き下げによる影響が剥落する。
まずは18日に発表される全国消費者物価指数がどの程度の水準なのか。前年比0.2%を上回れば実質的には2%に近づくこととなる。
さらに足下の原油先物価格が100ドル近くになるなどエネルギー価格の上昇は続いている。また、食料品の値上げも続くことが予想され、それがじわりじわりと消費者物価指数の引き上げに寄与すると予想される。
4月の全国消費者物価指数の発表は5月となるが、このあたりから2%がかなり意識されてくることが予想される。
資源価格の一時的な上昇によって物価が上昇しているとしても、「現在の世界経済と金融、大きな波を迎えている」こともたしかであり、日銀としても頑なな金融緩和策という姿勢よりも、より柔軟性を意識した姿勢に変化する必要がある。今回の総裁発言はそれが垣間見えたようにも思えるが、やや期待し過ぎであろうか。