タイガー・ウッズが世界ゴルフ殿堂入り。「25セントを1ドルに増やした」幼少期の秘話、母への感謝と涙
ゴルフ界の永遠の王者、46歳のタイガー・ウッズが3月9日(米国時間)、世界ゴルフ殿堂入りを果たした。
授賞セレモニーは、フロリダ州ポンテべドラビーチのPGAツアー・ヘッドクォーターの施設内で盛大に開催された。
米国の人気番組「マイク・ダグラス・ショー」に2歳で登場し、力強いスイングで上手にボールを打ち、人々を驚かせたウッズは、以後、全米ジュニア3勝、全米アマチュア3勝を挙げ、1996年にプロ転向。早々にPGAツアーで初優勝を挙げると、1997年マスターズを2位に12打差で圧勝。以来、「勝つためだけにプレーする」と宣言し、その言葉通り、メジャー15勝、通算82勝を挙げてきた。
その間、テレビ中継の視聴率は大幅に上昇。スポンサーも大幅に増え、そのおかげでPGAツアーやメジャー大会の賞金額は終始、右肩上がりを続け、米国のプロゴルフ界は拡大成長を続けてきた。それが世界各国におけるゴルフの発展を促進してきたことは言うまでもない。
ウッズがゴルフの世界にもたらしたものは果てしなく大きく、その多大なる貢献と数々の功績が讃えられ、このたび、ウッズは史上164人目の殿堂入りとなった。
PGAツアー前会長のティム・フィンチェム、全米女子オープン3勝のスージー・マクセル・バーニングらとともに殿堂入りしたウッズは、母クルティダや長女サム、長男チャーリー、それに恋人のエリカ・ハーマンを伴い、家族5人でセレモニー会場へやってきた。
式典では、14歳の長女サムが父親ウッズを紹介するプレゼンターを務めた。昨年2月の交通事故で重傷を負ったウッズは、昨年12月にフロリダ州内で開催された「親子大会」PNCチャンピオンシップには長男チャーリーとともに出場し、世界中の注目を浴びたばかり。今回、長女サムをプレゼンターに「起用」したのは、親子の絆を深める機会を2人の子どもに授けたいというウッズの親心だった。
【思わず涙】
「私の父、タイガー・ウッズを、ここで紹介できることを、私はとても誇りに思います」
セレモニーの壇上で真っ赤なドレス姿の長女サムがそう紹介すると、スーツ姿のウッズが現れ、父と娘は熱いハグを交わした。
そしてウッズは、自身の「ゴルフ史」を語り始めた。
その始まりは「40年前、6歳のとき、近所の海軍のゴルフコースへ父と行った」という思い出話。
その次は「8歳のころから、そのゴルフコースで毎週土曜日に開かれていたトーナメントへ行った」という話。母クルティダから「費用」として75セントを持たせてもらったウッズは、必要経費を差し引いて残った1クォーター(25セント)を大人たちとのパット合戦で増やし、「ポケットの中身は1ドルになった」。翌週は、その1ドルを「元手」にして増やしたそうだ。
全米ジュニアゴルフ協会(AJGA)のツアーに参加していた14歳のころ、大学進学を考え始めた。しかし、すでに多額のお金をAJGA参加で費やしていたウッズ家にお金はなく、「母は家を二重抵当に入れて大学進学の費用を捻出してくれた。母のそういう犠牲があったからこそ、、、、」とウッズが言葉を詰まらせる場面もあった。
観客席にいた人々は、15分超のウッズのスピーチに聞き入っていた。ウッズの家族はもちろんのこと、ツアー仲間のジョーダン・スピースらも頷きながら耳を傾けていた。初めて明かされた幼少期の秘話は、王者としてのウッズの存在感を一層大きくしたのではないだろうか。
ウッズのスピーチが終わってからも、人々の拍手はいつまでも鳴りやまず、その中で穏やかな笑顔を浮かべていたウッズの姿がとても印象的だった。