2年ぶりの実習生 ~~新型コロナが浮き彫りにしたこと~
日本は3月から新型コロナウィルスの水際対策を緩和させた。観光目的を除く外国人の入国を段階的に拡大するなか、来日が決まってから約2年待っていた外国人技能実習生が各地の受入(監理)機関に入ってきている。
少子高齢化と人口減少が急激に進む日本。技能実習制度は事実上、労働力の補充という目的が主となっている。今回のコロナ禍で実習生は昨年約5万人減ったが、それは水際対策で入国できなかったからであり、後発国の若者たちが日本で働くことを諦めたからではない。
記者は不定期に取材活動をするため、日雇いのアルバイトをし、様々な職場を覗いている。宅配便の仕分けや弁当工場、一般家庭や事務所の引っ越し、自動車部品の開梱検品、飲料の景品付けと箱詰め、車検工場での洗車など。どこもアルバイトで来ている日本人は40代以上で、なかには60代も。
若者といえばベトナムや中国、フィリピンなどからの外国人が目立つ。職場によっては外国人が過半数と言っても過言ではない。各職場ではマニュアルを厳守しなければならないが、殆どはラインに付いての単純作業。求められる日本語は日常会話レベルか、そもそも使う機会がなく、日本人の労働者にとっては立ち放っしだったり、力仕事だったりで、人気がないのが頷ける。そして、求人メールが連日送られてくることから、慢性的に人手不足の職場であることが判る。
今回、大分県豊後大野市の受入機関(監理団体)ワークビジョンに、来日を2年待っていたベトナム人実習生23人が入ってくるところを取材した。入国後3日間の検疫隔離があり、新型コロナの感染が判明した6人は隔離され、後日合流となっていた。
話を聞いたのは、受入機関の東和毅理事長(25)とベトナムからの20歳と21歳の実習生、そして実習生を受け入れている企業の役員、赤嶺隆一さん(79)。その企業は解体工事とリサイクルを主に営んでいて、やはり従業員の高齢化と若者からの求職がなく、人手不足に悩んでいた。コロナ禍で職を失った人たちがシフトして来て、人手不足は解消しているかも知れないといった淡い思いは、日雇いバイトの職場同様に、脆くも断ち切られた。
新型コロナウィルスの世界的まん延は、日本の労働市場を改変することなく、福祉行政や公的援助が乏しい後発国の貧富の差を拡大した。そして、今回のコロナ禍は日本での外国人労働者の需要は根深く、技能実習制度が不可欠になっていることを改めて浮き彫りにした。