2016年は101万人…高齢フリーターの推移と現状
職業選択の自由は日本国憲法に定められた基本的人権の一つだが、一方で社会的論点として「ニート」と並ぶ形で「フリーター」に関する問題がしばしば挙げられる。さらにこの「フリーター」と立場はほぼ同じものの、一般的定義では年齢の上限を超えるために該当しない「高齢フリーター(壮齢フリーター)」にも注目が寄せられている。今回は総務省統計局が2017年2月に発表した、2016年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果から必要な値を抽出し、この「高齢フリーター」の動向を確認する。
「フリーター」とは、年齢が15歳から34歳までで、男性は卒業者、女性は卒業で未婚の者のうち「(1)雇用者のうち”パート・アルバイト”の者」「(2)完全失業者のうち探している仕事の形態が”パート・アルバイト”の者」「(3)非労働力人口で、家事も通学もしていない”その他”の者のうち、就業内定しておらず、希望する仕事の形態が”パート・アルバイト”の者」の者を指す(配偶者と死別、別離した女性は該当しない)。
労働力調査では2010年版で他の条件に合致するものの、年齢が35歳から54歳までの者に対し、はじめて「高齢フリーター」との表現を使い、「フリーター」より年上の人達に対する定義づけを行った。それ以降の版ではこの表現は用いられていないが、この定義に基づいて前後の値も合わせ、「高齢フリーター」の値を計算していく。なお55歳以上をカウントしないのは、その年齢に達すると通常雇用されていた人の退職者(「高齢フリーター」とは言い難い)も多数混じってしまうため。
従来の意味での「フリーター」は2002年以降しばらく数を減らし、2008年を底値としてやや上昇、2010年以降は横ばい、さらには減少の傾向にある。それに対し「高齢フリーター」はほぼ一貫して(多少の起伏はあるが)増加する傾向を示している。35歳にまで歳を重ねた時点で突如フリーターを脱し、雇用上の安定感を得ているわけではなく、35歳以降も引き続き不安定な雇用情勢に置かれている人がおり、それが年々増加している状況である。
フリーター数が漸減しているにも関わらず高齢フリーターが増加しているのは、フリーターから脱する事ができない人が増加しているのが一因と考えられる。無論、自分からそのライフスタイルを望んで維持している人も、多数いるのには違いないため、ここでカウントされた人すべてが仕方なくフリーター状態にあるわけではない。
年齢階層別で見ると2011年までは「45~54歳層」はほとんど横ばいだったのに対し、「35~44歳」の増加が著しい。このことから、本来のフリーター枠で定義された「25~34歳」の人たちが逐次歳をとり、この層に加わって「高齢フリーター」の数を押し上げていることが想像できる。特に2011年は35~44歳層の増加幅が大きく、計測・データがある期間内では最大の増加数(前年比8万人プラス)なのが確認できる。
一方2012年以降はより高齢となる45~54歳層の増加も始まっている。万単位のカウントなので多少の誤差はあるが、2012年以降35~44歳層よりも45~54歳層の増加幅が大きくなっている。通常フリーター層から高齢フリーターの前半期の増加への移行による高齢フリーターの増加だけでなく、前半期から後半期への移行増加も始まったものと考えられる。ややこしい話になるが「高齢フリーターの高齢化」な次第。
直近の2016年では高齢フリーターの若年層部分、つまり35歳から44歳層の人口が大きく3万人も増え、45~54歳層は前年から変わらず過去最高値のままを維持、結果として合計値は前年から3万人上乗せされ、記録の限りでは過去最高の101万人となり、はじめて100万人を突破する形となった。他方、2009年辺りからの急増ペースはこの数年で落ち着いてきたかのように見える。
年齢層人口に対する構成比率の変移は、今回年は35~44歳の仕切りでは増加、その上の45~54歳では減少。中長期的には増加傾向が止まったとは解釈し難い。例えば35~44歳では、その年齢に属する人全体の29人に1人が「高齢フリーター」に該当する。
景況感は回復に向かい、失業率は低下し、フリーターそのものは減少し、ようやく高齢フリーターにも上昇に歯止めが見えてきたのが今年の動き。他方、該当者の内訳をみると、多くが完全失業者では無くパート・アルバイトの雇用状況にある現状から(例えば男性35~44歳における32万人のうち、パート・アルバイトの者は28万人に達している)、長年フリーターを続けた中堅層世代のパート・アルバイト「以外」として雇用されることが難しい状況が、これまでの高齢フリーターの増加を後押ししていたのだろう。
繰り返しになるが「(高齢)フリーター」すべてを「大人として望ましくない姿」「社会的に批判される立場」のような、否定的な存在としてとらえるべきではない。そのようなライフスタイルを望む、そしてそれをかなえられるだけの条件が整っている人も多数いる。一方で、フリーターから抜け出たいにも関わらず、悪循環の繰り返しでフリーターの立場に居続けざるを得ない人も居る。よほどのスキルや推薦、コネが無い限り、フリーターの期間が長いほど、職歴の上でも、経験の上でも正規雇用は難しくなる(雇用する側の立場で考えれば、容易に理解はできるはず)。
このような状況に対し、企業、行政、そして周囲の人たちはどのような手立てを講じるべきか。該当者一人ひとりはもちろん、関係各部局の意識改革が求められ、必要であれば状況改善のための行動が求められている。
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